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2005/06/10

撮影フォーマットとは撮影する画面サイズとそれを利用する感光材料のことを指します。

ピンホール写真を楽しむにはいろいろな考え方や表現の仕方があり、宿命的な問題であるシャープな写真が撮れないことに拘らない楽しみもありますが、出きるだけシャープな方が良い!というのは一般的な願望だと思われます。

他の項目でもお話しているようにピンホールの直径が決まってしまうと、感光材料面での最大解像度は決まってしまいます。 光の回折効果を無視してもピンホールの直径以下の点像とはなりません。 直径0.2mmのピンホールであれば1mm辺り5本の線解像度が限度であり、実際には回折の影響がありますから更に低い値となります。

低価格のカメラであっても1mm辺り60本以上の線解像度を持っている事が多いですから、このハンディキャップはかなりのもです。

 これを改善するもっとも効果的な方法は画面サイズを大きくすることで、例えばブローニーフィルムを使った
 最大規格の画面は6 x 9判と言い実画面サイズは56 x 84mmあります。
 35mm判の実画面サイズは24 x 36mmですので、例えば長辺に沿って写しこめる線の数は0.2mmピン
 ホールの場合最大で180本となりますが、6 x 9判では420本となり解像度は2.3倍改善されます。

 更にプロ用のシートフィルムを使う4 x 5判では実画面が86 x 120mmもあり、同様に計算すると長辺方
 向に600本、35mm判の3.3倍の解像度ということになります。

 印画紙を使って例えばA4判で撮影したとすると(A4判の印画紙はありませんが例えとして)、長さは
 297mmありますから計算上は1485本解像できることになります。

 こういった点で印画紙を感光材料として使うピンホールカメラは解像度の改善と言う点では意味あります
 が、実際には焦点距離の増大に従い最適なピンホール径は大きくなってきますので、大きくしたからと言っ
 て解像度がそれに比例して増大するわけではないので、注意する必要があります。

そこで画面サイズに対する最適ピンホール径に対する最大解像度がどのようになるのか計算してみたのが次の表です。 ここで回折効果による解像度低下は無視し、各フォーマットの縦横比が異なるので、対角線の半分を焦点距離とし対角線撮影画角を一定としています。
因みに35mm判では22mmとなっており超広角の焦点距離と言えるでしょう。

 
感光材料
画面
画面
画面
対角線
焦点距離
対角線/2
最適ピンホール
直径
1mm辺り
解像本数
対角線
解像本数
ハーフサイズ 35mmフィルム 24mm 18mm 30mm 15mm 0.137mm 7.30 219
35mm標準 35mmフィルム 24mm 36mm 43mm 22mm 0.166mm 6.02 261
645判 120判フィルム 42mm 56mm 70mm 35mm 0.209mm 4.78 335
6x6判 120判フィルム 56mm 56mm 79mm 40mm 0.223mm 4.48 355
6x7判 120判フィルム 56mm 70mm 90mm 45mm 0.237mm 4.22 378
6x9判 120判フィルム 56mm 84mm 101mm 50mm 0.250mm 4.00 404
4x5判 シートフィルム 86mm 120mm 148mm 74mm 0.304mm 3.29 486
A4判 印画紙 210mm 297mm 364mm 182mm 0.476mm 2.10 764


これらを見ると6x9判は35mm判に比べて1.5倍くらいシャープに見えるはずで、4x5判になりますと35mm判の2倍近くシャープに見えるはずです。 以上は回折現象を無視した解像本数計算ですからこの通りになるわけではりませんが、傾向としてこのようになることは間違いないでしょう。 よってなるべく大判のカメラを作りたいところですが、どっこい以下の問題があります。


 感光材料の種類
  ポピュラーな35mmフィルムは白黒フィルム、カラーフィルム共に最大感度ISO1600迄存在します。 どうしても露出時間が長くなりやすいピン
  ホール写真で少しでも露出時間を短くしたいとすると、有利になります。 またカラーフィルムではフィルムの感度のみならず、 カラーバランス
  や発色性の異なるフィルムの存在も撮影目的によってはありがたいです。

  120判フィルムは35mmフィルムに次いで種類が豊富で選択範囲も結構大きいです。

  その上のシートフィルムとなるとぐっと種類が減ってきます。 また印画紙の場合にはカラーと言うわけには行かず白黒のみでしかもコントラスト
  が強く出る関係でピンホール写真用に使えるのは2号の印画紙のみとされており、選択可能範囲は狭いです。

  インスタント写真用フィルムも巻き上げ機構を考えなくても良いので、比較的簡単に作れますが専用のホルダーを使わないとならず、これの
  コスト負担は結構大きいです。 またカラーバランスが狂いやすいのも作画上意識して使うのならいざ知らず、余り面白いことではありません。


 感光材料の入手性
  35mmフィルムは出先でも簡単に入手可能ですが、120判フィルムは出先で入手するのは難しくなります。 シートフィルムや印画紙になると
  それこそ写真の専門店でないと或いは取り寄せないと入手不能です。

  インスタントフィルムは大判の物でなければ、入手性はかなり良い現状といえます。

 カメラの作りやすさ
  35mmフィルムを使った場合巻き上げ機構を作るのはさほど難しくはないのですが、問題は1枚ずつ正確にフィルムを巻き上げる機構、撮影枚
  数を確認する方法の2つで難易度がかなり上がります。 昔はボルタ判という裏紙が使われた35mmフィルムがあったのでこれを使えば後述
  する120判フィルムの巻き上げ機構と同じ難易度になり簡単に出来ました。

  但し1眼レフ、レンジファインダーカメラ、ジャンクカメラの改造等の方法を使う場合には、製作難易度は最も低くなります。

  120判フィルムは裏紙という遮光紙の間にフィルムが挟まれた構造になっており、裏紙には各フォーマットの撮影駒数が印刷してあるので、
  裏蓋に穴をあけてこの数字を読み取りながら巻き上げればよいので、巻き上げ機構は比較的簡単に出来ます。

 4 x 5判の場合には巻き上げ機構はなくフィルムホルダーを光線漏れなく差し込めるようボディーを作れば
 よいので、難易度はそれほど高くありません。 但しフィルムホルダーが高価で、この負担が大きいです。
 (左の写真は2パックで約1万円で購入した新品の4x5判用フィルムホルダーです。)

 これはインスタントフィルムを使う場合も同様で、撮影後フィルムを引き抜くと現像剤を均等に延ばすローラ
 ーの機構がデリケートで、購入するしか手がありませんが、大判の物では1万円以上します。

 印画紙を使ったカメラの場合の作りやすさは以上の中で最も簡単と言えます。 但しいちいち印画紙を暗室
 かダークバックで交換しなければならないので、複数の撮影という点で問題があります。
 シートフィルムホルダーと同じ構造のものを作ってやれば複数の撮影も容易になりますが、ホルダーの自
 作にかなり手間が掛かるでしょう。

 コスト負担
  趣味の領域であるとはいえ出費がかさむのは困ります。 35mmフィルムは現像代も含めたコストの点で最も有利で、120判フィルムはそれよ
  り割高、4x5判のようなシートフィルムになると更に割高です。 印画紙の場合には自家現像が前提ですのでそれほど大きなコスト負担と感じ
  ることはないでしょう。 他にカメラの製作費用に関しては構造次第で千差万別ですが、シートフィルムを使う場合にはホルダーのコスト負担が
  かなり大きいです。 この面で中古のシートフィルムホルダーが入手できるとありがたく、私もこれから作る予定でいる4x5判用のホルダーを中
  古カメラ店で何と1個\400.-で販売されているのを見つけ5個買いました。  傷だらけで汚れもかなりあり遮光板の抜き差しも渋いですが光
  線漏れもなく使えるとのことでした。

以上の他にも運びやすさなどの問題など色々考えられますが、解像度の問題と併せて以上を整理し優位性の点数を入れてみると次のような表が出来上がります。 但し以下の評価は私の独断と偏見による感覚的な評価とお考え下さい。

撮影フォーマット 解像度 感光材料 作りやすさ コスト負担 総合優位性
種類 入手性
35mmハーフサイズ X X X
35mmフルサイズ(ボディー自作) X X
35mmフルサイズ(カメラ流用)
645判(120判フィルム) ○-
6x6判(120判フィルム)
6x7判(120判フィルム) ○+
6x9判(120判フィルム) ○+
4x5判(シートフィルム)
印画紙
インスタントフィルム ○-


私の考え方としては、解像度に少しでも拘りを見せるなら120判フィルムを使った6 x 6判、6 x 7判、6 x 9判辺りがバランスの取れた選択で、どのサイズを選んでも自作難易度は同じですから撮影枚数により画面サイズを決定すればよいでしょう。 少しお金が掛っても良いなら4 x 5判も大変魅力的です。 印画紙を使う場合はモノクロームに限られるものの、交換可能な印画紙ホルダーを自作すると複数撮影が容易になりますから、高解像度の写真を楽しめるでしょう。  残るはカメラ本体を流用する35mm判で安直に楽しむ!というところでしょうか?



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