6 x 9判ピンホールカメラ 自作カメラINDEXに戻る Home Pageへ

製作期間: 2003/03/06 - 2003/05/08

構 想

サイトに掲載する自作ピンホールカメラとしてはこれが第一作です。 その昔中学生時代にボール紙で作ったピンホールカメラでの撮影結果を思い出しながら、問題点を極力潰すべく次のようなことを設計構想の中に盛り込んでいます。

  1.出来るだけ大判サイズとすることで相対的にシャープさを増す。
    これは大きければ大きいほど有利なのですが、使用出来る感剤の大きさには限度があります。 プロ用の大判シートフィルムが理想
    ですが、入手性がイマイチなのとフィルムホルダーのコストが高く自作も難易度が高そうなので、妥協点としてブローニーフィルムを使
    うことにします。
    そしてこのフィルムを使う最も大きな画面サイズ(6x9判というが実画面は56mmx84mm)にします。
    この大きさですと引き伸ばすことなく画像鑑賞が可能です。

  2.露出時間が長く三脚の使用は不可欠だが、極力露出時間を短くするため焦点距離は短くする。
    絞りの値は焦点距離をレンズの口径で割って得られる値ですが、ピンホールの直径は0.2mm-0.3mm辺りがベストと言われていま
    す。  従ってピンホールの直径をこの辺りに固定すると焦点距離が短いほど絞り値は小さく(明るく)なります。 具体的には焦点距離
    を35mmとしました。通常の35mmカメラに換算すると15mmという超広角です。


 3.ピンホール部分の厚みを極力薄くする。
   周辺光量が低下する原因はピンホールから感材までの距離が画像周辺に行くに従い遠く
   なり、F値が増大することと、ピンホールを作った材料の厚みがケラレ効果による光量低下
   をもたらすためです。 

   計算してみますと画面対角線の端ではピンホールの位置から61mmも離れ、光量は距離
   の比の二乗に反比例しますが、何と露光量は1/3に低下します。

   (株)ケンコーではこのような周辺の露光不足を補正するフィルターを販売しておりますが、
   これで補正できるのは2倍程度ですので補正し切れません。
   この前者の問題は今後の課題として改善策を考えたいと思います。

   後者は極力ピンホール部分の厚みが薄くな
   るよう工夫することで改善可能です。



次に目標とする仕様を設定しました。 余り欲張っても仕方ないので今回は、

  1.焦点距離は35mm固定とする。

  2.本格的なシャッターを自作する。 
    (シャッターをセットするコッキングは手動だが、シャッターボタンを押すと
    シャッターが開きもう一度押すと閉じるような構造。)


  3.巻上げ装置は入手可能な金属部材を加工して作る。

  4.ボディーはアルミ板と木の板を使う。
    アルミ板で強度を確保し木材で外観をデザイン。

  5.目標コストは\2,000.--\3,000.-



最終設計のための構造部製作

構造検討・設計のために一部の構造部試作に入りました。

  1.銅のリベット
    つばの部分が厚さ1.8mm、つばの直径が10mm、軸径が5mm、長さは10mmありました。
    4個の購入価格が\80ですが、フィルム巻上げ装置の部材に使えそうです。 銅は鉄ほど硬くありませんが、
    鉄のような錆び易さがなく加工も容易です。

  2.スチール回転ピン
    本来は扉の回転軸に使うようで、軸の直径が6mm、全長22mmですが、端から9mmの位置に厚さ1mm、直径13mmのつばがあります。 従ってもう一方の端からつばまでの長さは12mmです。 これは4個\180で購入しました。 軸径6mmはオーディオアンプ用のツマミ内径と同じですので、このツマミを加工したピンに巻き上げノブとして取り付けフィルム巻き取り装置を作る魂胆でいます。 つばの部分は抜け止めとして働きます。

3.空スプール
  ブローニーフィルムの空スプールは現像所に行ってわけを話せば只で譲ってもらえると思います。 
  空スプールがないとフィルムを買ってきて装填しても巻き取りのしようがないので絶対必要になります。


第一次構想図

 空スプールの諸寸法をノギスで測りましたら左の図のようになりました。 また銅リベットとスチール回転ピンの各部
 寸法も併せて載せておきます。

 6x9判の実画面サイズは56mmx84mmであることと、入手した部材等を加工した巻き上げ機構を思いつくまま描き
 上げそれに各部を追加し第一次構想図が出来ました。                  (下の図をクリック願います。)

 最初はボディーは総て木材とすることを考えていましたが、巻き取り装置の部分の軸受け
 をどうするか迷い3mm厚アルミ板に5mmの板を被せるような構造としています。 こうする
 ことにより光線漏れの可能性はかなり回避できると思います。
 ボディーサイズは幅181mm、高さ94mm、奥行き58mmとなっておりかなり大型ですが、6x9判ですから止むを得ないところでしょう。

無論この構想図が最終ではありません。 数日たってから改めてみると問題点が発見されることが多いで
すし、一番手が掛かると思われる、巻き上げ機構とシャッターの試作がうまく行くまでは折を見て構造検討を見直して行きます。

 巻き上げ軸の加工

 フィルム巻上げ軸はホームセンターで見つけたピンを加工して作ろうと決めたわけですが、手許にある2眼レフマミヤ
 C330f
の巻き取り軸とフィルムスプールの寸法を参考の上で、左図をクリックした図右側の図のようにしようと考えていま
 す。 マミヤの場合図中9.5mmの部分が9mm1.6mmの部分が1.55mmでした。 この差はスプールの各部寸法から
 すると問題にならないと思います。

 ピンその直径の太さはツマミを取り付けるには具合よいもののフィルムスプールの穴径5.5φには太すぎますので削ら
 ねばなりません。  色々思案した結果簡易型旋盤?を作りこれで加工しました。 
 (この旋盤?については別途VIC's D.I.Y.で解説しています。 こちらからご覧下さい。)

 加工が済んだピンは左の写真のようになっています。
 研削した表面は粗いので完璧とは言えませんが、実用上支障のない精度の物が出来たと思います。
 最終組上げ段階でこのピンの切り込みに厚さ1.6mm、長さ9.5mm、幅4mmの真鍮板をエポキシ樹脂接着剤で接
 着して巻き上げ軸は完成する予定です。






 カメラ本体最終設計

 シャッターが何とか物になりシャッター自身のサイズも決まりましたのでカメラ本体の設計を最終的なもの
 とすべく細部の検討を進めました。

 カメラ本体の最終外観図寸法図は左の図をクリックください。 
 またそれらを構成する全部材の寸法詳細図こちらです。

 本体部材については、本体上部内側を除き3mm厚、5mm厚、10mm厚のアガティス材としました。
 朴とすることを考えていたのですが(部材詳細図では朴となっています。)、偶々行きつけのホームセンター
 では木目と色が気に入った物がなくアガティスとしました。 この辺りは木目と色の好みの問題になると思
 います。
 予算が許せば桜材、チーク材、ウォールナット材、ローズウッド材などの高級木材を使いたい所ですが、金
 欠病の私からすると目の玉が飛び出るような値段です。

本体上部の内側の板には巻き取り装置の回転軸が通るので3mm厚のアルミ板を使うことにしました。

下部のフィルムスプールを支える軸はスプールを挟み込めるよう可動式にしてバネで定位置に押さえつけます。 バネは内径7mm、外形8.7mm長さ24mmの押しバネを短く切って使うことにします。 またこの軸を固定する台座は1.5mmのアルミとしますが、片側には小さな真鍮製ヒンジを貼り付けます。 ヒンジの羽の部分が7mmx12mmという小さな物です。  尚これらフィルムスプールの受け軸にはスプールとのこすれを滑らかにするためポリカーボネイトのワッシャーをかませます。 

本体は3mmの板で内側の第一層を5mmの板で外側をという貼り合せ構造と考えています。 なぜこうしたかというと、各角が互い違いに貼り合わされるために光が漏れるような隙間があっても光はジグザグに進まねばならず遮光の点で有利だからです。 一枚板の構造ですと内側隅に遮光材を貼らないとならないと思います。 ボディーの厚みは8mmと比較的厚めになりますが、画面サイズが大きいのでそれほど大げさではないような気がします。

デリケートな加工を要求されるのがフィルムレール部分です。 厚みが1mmの内側レールと、厚み1.5mmの外側レールが対でありますが、外側レールにはフィルム圧板が密着しますので0.5mmの隙間ができますが、ここをフィルムが通過します。 この0.5mmの段差は手持ちのマミヤC330fのレールの段差が実測で0.45mmだったのを参考にして決めました。

 フィルム圧板は色々考えた末手許にあった電子回路プリント基板を所要寸法に切断して使うことにします。
 厚みが1.6mm、紙にポリエステル樹脂を含侵させたもので、ポピュラーな紙フェノール(紙にフェノール
 樹脂を含侵させたもの)
より反りが少ないようです。
 高価ですが紙エポキシやガラスエポキシにすれば更に反りに対して有利ですがそこまでの必要はないと
 思います。
 プリント板ですから片面は銅箔が貼ってあり遮光は万全で、反対側のポリエステル面がフィルム裏紙に接
 触するように使う予定です。

このフィルム圧板は黒の4-5mm厚のスポンジゴムを介して裏ぶたに接着されますがフィルム圧板と裏板の間隔は2.9mmですから、スポンジゴムがつぶれフィルム圧板をレールに適当に押し付ける力となります。

底板には3mm厚のアルミ板を挟み込む構造になっていますがこれは三脚ネジ穴を考えているためです。 三脚ネジ穴はW1/4のインチ規格でメートルネジではありません。 の下穴をあけてからW1/4のタップでネジを切り埋め込む算段です。

 ファインダーに関しては金属枠で出来たスポーツファインダーと称する物を作るつもりでいましたが、フォクト
 レンダーの15mmファインダーを持っているためこれを兼用することにしました。
 35mmフィルムの画面比と6x9判の画面比は同一で35mm15mmの焦点距離は6x9判では35mm
 なりますので、焦点距離35mmのこのカメラにはおあつらえ向きです。

 ファインダーの取り付けにはアクセサリーシューが必要ですが、ジャンク箱をあさったところ死蔵品のカメラ
 ブラケットが見つかりこれに付いている物を外して使うことにします。

本体前部中央の穴にピンホール板を貼り付けその上にシャッターを取り付けますがむき出しはまずいのでカバーを取り付けます。 このカバーは斜めからの強力な太陽光線などが僅かな隙間から内部に洩れるのを防ぐ効果と物理的なシャッターの保護が主目的で、完全固定してしまってはシャッターの修理やピンホールのメインテナンス、交換が出来なくなりますので、ボディー内側からネジ止めする構造とします。

小さな部品として裏ぶたに付く撮影駒数確認窓とシャッターに取り付ける2個のツマミがありますが、これらはシャッターを作るのに使った断面E型のアルミ押出し材の残りを加工しエポキシで貼り合わせて作ります。

以上が最終設計のあらましですが、部材として巻き上げ軸のツマミと燐青銅板の入手がまだですのでそれらにより若干の変更があるかもしれません。 またフィルム巻き上げ軸の逆転防止機構をどうするかも今後歩きながら考える方式で決めねばなりません。



カメラ本体製作その1

やっと本体製作に入ったのですが、またまた欲が出て道草というわけではないのですが拘りの為に時間を食う作業をしてしまいました。 何をやったかというとフィルム巻上げ装置に逆転防止機構の追加しました。 これまでの図面をご覧になるとお判りのとおりこれまではフィルム巻上げ軸には逆転防止装置はなく図面にはないもののフェルトか何かを軸受けに挟んでフリクションを高めてやろうと考えていました。

 ところが巻き上げノブを決めねばとジャンク箱を物色していた所直径31mm、厚み10mmの設計図に近し
 い黒アルマイトのおあつらえ向きの物が出てきました。 但し内側が直径27mm、深さ4mmに渡りえぐりとられています。
 それと軸穴径があり既に加工したの巻き取り軸には合いません。 殆どのラジオ、アンプ用のツマミ
 はの軸径ですが、2重ボリューム(正確には2重可変抵抗器です。)という1軸に2つのツマミを取り付ける
 ものがあり、この場合内側の軸はで外側の軸にはのツマミがつきます。

おあつらえ向きのツマミは外側用だったわけです。 そこで更にジャンクボックスを探した所2重ボリュームが幾つか出てきました。 その外側の軸を切り落とすと外径、内径のパイプが得られこれを軸径調整のアダプターとして使おうと考えた時、外側の軸にローレット(ギザギザの溝)が刻まれた物も出てきました。 待てよこいつを切り出してここに板バネを当てれば逆転防止装置が出来るぞ!ということに気が付いたのです。 えぐれたツマミの部分に逆転機構が入るように作ればよいわけです。

後は押せ押せどんどんで1日かけて逆転防止装置を何とか製作しました。 正転方向にツマミを廻すとギーッと板バネがローレットを順々に擦る音がし摩擦で適度な重さになっています。 無論逆方向に廻そうとしてもとローレットに板バネが引っ掛かって廻りません。
思いがけなく良好な動作をしてくれていますが、ここに使った部材はジャンクからひねり出した物で一般的ではありませんし、かなり手間が掛かりますので、一般的にはオリジナルの案どおり巻上げ軸のフリクション(摩擦)を高める方法で充分だと思います。

ということで追加の拘りから出来上がった逆転防止装置付きフィルム巻上げ軸の完成までは以下の写真と説明をご覧下さい。

穴あけの終わった第1層上板(3mmアルミ板)、固定ピン
(4 x 10 1.5t アルミ)、ポリカーボネートのワッシャー、そして既に加工してある巻上げ軸。 小さな穴は逆転防止装置用に切ったメスネジ穴です。

第1層上板をポリカーボネートワッシャーで両面から挟み巻き上げ軸を通した後固定ピンをエポキシ樹脂接着剤併用でがたつきがないように叩き込みました。 この写真は内部側で、この部分にスプールの片方が嵌ります。

真横から見た所。 ポリカーボネートのワッシャーアルミ板を挟んでいるのが判ります。 ポリカーボネイトのワッシャーを挟んだのは柔らかいアルミの磨耗防止とフリクションの増大を狙ったものです。

上面のクローズアップでオリジナルの設計どおり作る場合は、巻上げ軸はこれで完成です。 後はこの部分に内径6φのラジオ・アンプ用ツマミを固定するだけです。

第1層上板の上側から見たエポキシで固定したフィルム送り出し側のスプール軸受け。 元々の長さは長すぎるので、8mmとなるまでヤスリで削りました。

この軸にもポリカーボネートワッシャーを被せまが、ポリカーボネート面から4mmの突出量となりここにスプールの穴が嵌り込み自由回転します。

ここからが逆転防止機構の製作です。 これが2重ボリューム(2重可変抵抗器)という電子部品で、25年以上眠っていた真空管アンプ用のものです。

中央ののぺっとした部分が外径8φ、内径6φのパイプ状になっています。 この部分がローレット(ギザギザ)になっている物もあり、両タイプを長さ6mmずつで切り出しました。

のぺっとしたものとローレットつきの2種類を切り出し、巻き上げ軸にエポキシで接着しました。 これで軸径は8φとなります。

ジャンクから探したバネを15 x 4mmに切断し、0.8mm真鍮板で作ったL金具にリベットで固定し、直角に曲げた逆転防止の金具です。

巻き上げ軸の両側に逆転防止の金具をネジ止めしましたが、ネジ1本では緩みやすいのでエポキシを併用しています。 バネがローレットの溝に当っているのが判ります。

逆転防止機構を真上から見たところです。 フィルム巻上は時計方向ですが時計と反対方向に廻そうとすると板バネが引っ掛かって廻らない構造が判ると思います。

ツマミを取り付けるとツマミの内部のえぐれ部分に逆転防止機構が隠れます。 第1層上板との間に5.5-6.0mmの隙間がありますが、5mm厚の第2層上板が後で取り付くので隙間はごく僅かとなります。

これだけをみても面白くもなんともありませんが、上から見た完成後の第1層上板全景です。



カメラ本体製作その2

面倒な加工部分の山場を越えもう一息ということでカメラ本体第1層部分を完成させました。 製作した順序に従い以下の写真と説明をご覧頂きたいのですが、その前に別途解説しているコッキングレバーとシャッターリリースレバーが独立したシャッターをお目にかけます。

アルミ板と真鍮板を素材として使い、ジグソーで大まかに切断してから金工ヤスリで仕上げて作ったシャッターで、組み上げにはエポキシ樹脂を多用しています。 動作の信頼性は99.5%位といったところでしょうか?

第1層を構成する部品を切り出しました。 この中に写っていないのはフィルムレールと緩み止めのバネだけです。

撮影画面枠は枠断面で光が反射して写り込むのを防止するため斜め(約30度)に削り落としました。

斜めに削り落とした撮影画面枠(10)です。 手前が前方になります。

いよいよ接着開始。 ボンドで中枠側板(6と7)と中枠底板(8)を接着します。

撮影画面枠を更に木工ボンドで接着します。 ハタ金や小型のクリップが活躍。

スプール受け板(15.16)に銅のピンをエポキシで接着。 更に小型のヒンジをこれまたエポキシで接着しました。

スプリングの外れ防止に8φのラミン棒を7φに削り厚み1.5mmで切断し銅ピンの頭にエポキシで接着。 

中枠底厚板(9)を木工ボンドで貼り付け。

中枠底厚板の両端にスプール受け板のヒンジ部分をエポキシで接着しました。



外側と内側のフィルムレール(11〜14)を曲げないようアルミ板から切り出し、フィルムの当る面はクレンザーと歯磨き粉で研磨します。 下2本は内側のレールで、端5mmを緩いカーブで研磨してあります。


 註): クレンザーと歯磨き粉は身近にある格安の研磨剤です。 
    別に測定したわけではありませんが、感覚的にはクレンザーで磨くと#400位の細かさに、歯磨き粉ですと#2000
    上になっているのではと思います。 
    実際には寸法を調整したレールを平らな板の上に置き、小さな板切れにクレンザー或いは歯磨き粉を付けて擦るわ
    けです。 クレンザーで擦るとじゃりじゃりした感触が伝わってきますが直ぐにねっとりした感じになり木片は真っ黒
    になります。
    歯磨き粉の場合はじゃりじゃりした感触は全くありませんが、これも木片で擦っているうちに木片は真っ黒になって
    きます。(何れもアルミが削れ落ちたために付く色です。)

    こうして歯磨き粉で磨き上げるととフィルムに全く擦り傷がつかないくらいに滑らかな表面になります。


内側レールを中枠の所定の位置にエポキシで貼り付け次に外側レールを貼り付け。 レールに傷を付けない様充分注意。!

4本のレールを貼り終った中枠。 外側レールと内側レール段差は0.5mmの筈ですが、実測では0.45-0.50mmでほんの少し低いものの許容範囲に入っています。

フィルムレールのクローズアップ。 内側の端を緩いテーパーで落としてありますので、レール端の角が直接フィルム面には当りません。

更に内側側レール間の木の枠角も緩いテーパーで削り落とし、フィルム面が当らないようにしました。

0.2mm厚の燐青銅でスプール押さえ(47、48)を作りエポキシで中枠両横に接着しました。


上から見たところでスプール押さえの曲げの具合が判るでしょうか? 実際にはスプールに軽く当りフィルム巻き取りの緩み止めになります。

出来上がった中枠に無光沢黒の塗装をしました。 使った塗料は黒板用のものです。 無光沢という点ではかなり良さそうですが、金属面の塗膜は極めて弱く簡単に剥がれるのが難点です。

塗装を施した中枠内部。 よく見えないと思いますが、反射光防止にかなり効果がありそうです。

次に中枠に底板(2)と前板(5)を木工ボンドで貼りました。 相変わらずクランプハタ金でしっかり密着させています。

完成してからでは塗りにくい部分の艶消し塗装をあらかじめ済ませておきます。

第1層の組立では最後の工程になりますが、側板(3、4)を貼りアルミの上板(1)をエポキシで接着。


接着後未塗装部分を塗ってカメラ本体第1層部分が完成しました。 フィルム巻き上げも試してみましたが、旨く動作し不具合らしき物は今の所見当たりません。

完成した第1層の本体を後方斜め上から見たところ。 だいぶカメラらしくなってきました。

同じく前方から見たところですが、表層の板で覆われてお化粧されない限りのっぺりとしていて面白みがありません。


カメラ本体製作その3

第1層部分が出来上がり引き続き第2層部分の製作に入っています。 第1層よりも全般的には加工・組立ての難易度は低くなりますが、最終的な外観に影響する部分ですので材料表面につけた傷や継ぎ目の隙間などは目立ちますのでまた違った点で結構神経を使います。

また貼り合せの繰り返しの中で設計寸法から少しずつ大きめになる傾向にありますので現物合わせの概念も必要になってきます。 この少しずつ大きくなってくる原因は、加工寸法を安全を見て大きめにしやすい(小さく加工するとやり直しになってしまう。)、接着剤で貼り合せると接着剤の厚み分大きくなる。の2つの原因の集積結果で、私の場合完成した本体の箱の幅は設計値より0.8mm大きく高さは0.6mm高くなっています。 技術がないからといえばそれまでですが、アマチュア的には現物合わせで行くしかないと思います。

第2層(表面)となる底板(18)と上板(17)の外側の予備加工をしたところ。

同じく内側で三脚取り付けのネジを切った3mmアルミ板や、銅リベットが隠れる座繰り穴が見えます。

こちらは第2層の前板(25)と後板(26)です。 後板にあけられた丸い穴は撮影枚数確認の窓となります。

第2層側板と上板そして底板を接着中。 上板はアルミ板に貼る為合成ゴム系G17を、他は木工ボンドを使っています。

更に裏蓋側板(23,24)と裏板を本体に当てた状態で接着(これも現物合わせの考え方)。 この時本体との間にサランラップを挟んであります。

合間を見計らいアクセサリーシューを高さ調整の4mm厚アルミ板を挟んでエポキシで第1層アルミ上板に接着しました。


 註): 木工ボンドがはみでて他にくっつかないようサランラップで保護する方法は覚えていて損のないテクニックです。
     サランラップに木工ボンドは付きませんから後で簡単に剥がせますし、厚みが薄いため余計な隙間が生じることも
     ありません。



 
第2層(表層)を貼り終った本体を前面から見ました。 巻き取りツマミも付けてみました。

同じく後ろ側で、極めて単純な箱というしかない外観です。

前板の予備加工(ピンホール板埋め込み部の彫りこみ、シャッターのネジが当る所の座繰り、シャッターユニット固定ネジ穴そして前カバー固定ネジ穴)を施しました。

ピンホール板だけは交換・調整が簡単に出来るようセロファンテープ止めとしましたがシャッター板との間に挟まるため動くことはありません。

シャッターユニットを固定し、これまで説明していなかった
ある追加加工の準備に入りました。


前カバー枠(28、29、30、31)を木工ボンドで貼りあわせます。


シャッターレバーとコッキングレバーが通る欠き込みをヤスリで加工した後、1.5mm厚アルミ板で作ったLアングルに4mmネジを切った金具をエポキシで貼りました。


ケーブルレリーズを取り付けタイム露出状態とした所です。 ケーブルレリーズが付いたままでシャッターレバーでシャッターを作動させることも可能です。



 註): ここで追加したLアングルはケーブルレリーズの固定ネジとなります。 この機構の追加によりバルブ動作と同時に
     タイム動作も可能になりますし何と言ってもシャッターを作動する時のカメラブレを軽減できます。
     無論ケーブルレリーズ無しでも使えますし、ケーブルレリーズ装着時にケーブルレリーズには拘わりなくシャッター
     を切ることも可能です。 これは素晴らしい思い付きでした。



 
そのアップ。 シャッターレバーの断面は強度を確保するため断面がL字状になっていますが、そこをレリーズの心棒が押すような構造です。 シャッターが開いたままのタイム露出が可能になります。

巻き取り装置のバックテンション機構をすっかり忘れていたため、0.4mm厚燐青銅板で急遽追加しました。燐青銅板がフィルムスプールのフリンジ部分を押し付けバックテンションが掛かります。

フィルム圧板をプリント基板から切り出しました。 穴は撮影駒数確認の窓です。 この後両面を艶消し黒で塗装します。 ここまでに使った塗料は擦れに弱いので、アサヒペン クリエイティブカラーのスプレータイプを使用しました。 艶が若干多いですが擦れに対しては強いようです。

フィルム圧板の裏側に2.5mm厚の黒スポンジテープを貼りその上に両面接着テープを貼りました。 フィルム巻上のテストちゅうですが、この後裏蓋を載せてフィルム圧板を裏蓋に固定します。

フィルム巻上げやシャッターの動作を確認した後、総ての部材を外してボディー整形作業にはいりました。 整形作業は、カンナ掛け → 木工ヤスリ粗目 → 木工ヤスリ中目 → 木工ヤスリ細目 → #600ペーパーと丸1日掛けました。


和新ペイントの水性ステイン(マホガニーブラウン)で着色しました。  変則的ですが原液を刷毛で2回塗りして乾燥後#600ペーパーで研磨した上に更にステインを塗り重ねた3回塗りでかなり濃いめです。



カメラ本体製作その4

やっと塗装に入り最後の仕上げへと進みました。 塗装は1液性ウレタンニス2回塗りの後#600のペーパーで研磨後更に2回塗って#600で研磨最後に1回塗りと5回塗りましたが、正直言って工芸品らしきものといった仕上がりで、塗り斑、刷毛目、埃の付着などとてもプロの技からは縁遠い状況で改めて塗装の難しさを感じた次第です。

塗装が終われば撮影状態に入れるわけで、一旦作業を止めて試写した後最後のお化粧として前カバーの大きな穴を埋めるフード、撮影駒数確認窓の製作、巻き取りツマミのお化粧(上から見ると穴が見えるのを隠す)を経てようやく完成となりました。

とにもかくにも5回塗りの塗装が終わった本体、裏蓋、前カバー。

前カバー拡大写真。 この位離れて見るとうまく塗装が出来たように見える。

同じく角の部分のアップでこれまた良さそうに見えます。



シャッター動作に支障ない範囲を無光沢黒で塗装。 
シャッターボタン、コッキングツマミもアルミを削って組み合わせ固定しました。

全体を組上げ試写出来る状態になりました。 前カバーには大きな穴があり臓物が見えて見苦しいですが、試写後にお化粧します。

試写のためのフィルム装填。 6 x 9判ですから#120フィルムで8枚撮りとなります。

撮影枚数確認窓(昔は赤窓と呼びました。)のカバーをアルミ押出し材を削り貼り合わせて作りました。

このカバーは写真のようにスライド式に開閉します。

1mm厚アルミ板を細く切断し四角い枠状にしエポキシで端を接着。 これが前カバーに嵌め込まれフード枠になります。

1mm厚塩ビ板を切った5枚貼り合せの遮光ブロック。 これは裏側でフード枠の後に固定され、間に化粧紙を挟む。

 完成したピンホールカメラ。 前カバーの大きな穴も遮光ブロック、フード枠、化粧紙が取り付け綺麗になりました。 
 私のニックネームをもじったVictron Ultra Wideなんていうレンズ名?や焦点距離、F値表示(f=35mm 1:175)も入れて
 カメラらしいルックスになりました。

背面の様子。 撮影枚数確認窓が見えるだけで極めてシンプル。

裏蓋固定は両側に付けられたドイツ錠でなされます。



試 写

取り敢えず変な光線漏れがないかどうか?撮影が問題なくできるかどうか? ケラレがないかどうか?等の確認する試写をしましたので以下に掲載します。 尚これらの写真は富士フィルムのポジカラーのベルビアで撮影し、エプソンのページスキャナー(GT-9800F)Auto modeにて取り込み480X315に圧縮(JPEG圧縮率は1/5)したものでそれ以外はいじっておりません。



テスト撮影 1

露出約2.5秒

35mm判では15mmの超広角ですからとにかく写る範囲が広いです。 中央に写っている木は随分大きいのですが小さく見えます。

4隅の周辺減光がどうも均等に発生していないようなのですが、もう少しテストを続けないとはっきりしたことは判りません。


テスト撮影 2

露出約3秒

画面周りに写っている直線はちゃんと直線になっています。 

ピンホールレンズは超広角であっても歪が出ないことがこの写真でももう確認できます。


テスト撮影 3

露出約3秒

これは準逆光という撮影には厳しい条件でした。

35mmの短焦点のため結構寄ったつもりなのですが、そのようにな感じには見えません。


最後に

何とか無事完成し当初の目的はほぼ達成したと考えています。 但し始めてやる加工や作業が連続し極めて長時間の緊張を強いられましたし、致命的なミスはなかったとは言え細かな失敗は沢山あり次の機会にはそれらの経験を踏まえてもっと要領よく進めたいと考えています。

また私の作ったものは極力メーカー製カメラに近しい機構にしようとしたため、自ら難易度を高くしてしまった嫌いがありますが、ピンホールカメラは基本的にピンホールと暗箱がきちんとできれば実用になりますので、もっと作りやすい簡単な構造のもので実現できます。 しかしながらその場合でも「ピンホール製作」の部分が成功を収められるかどうかの鍵となります。

----- 完 -----


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