35mmピンホールカメラ 1 自作カメラINDEXに戻る Home Pageへ

製作期間: 2004/06/11 - 2004/05/25

構想
3台目のより大画面のピンホールカメラを製作しようと考え構想はほぼ練り終わり後はいつ製作開始するだけになっているが、なんとなく頭の中でもやもやしているものが実はあった。  つい最近になってそれが何であるかに気づき、35mmのピンホールカメラでどこまで行けるのか?ということだった。

ピンホールカメラを最初に作ったのは中学1年生だったと思う。 針穴は今と同じ方法で作ったがカメラ本体はボール紙の貼りあわせで、フィルムはボルタ判フィルム(35mm判だがフィルムを送るための穴がなく、裏紙が付いているタイプ)を真夜中に押入れの中にもぐりこんで鋏で切断しカメラに装填した。 当然一度で1枚しか撮影できず、現像もまた夜中に押入れの中に潜り撮影したフィルムを皿現像するという、しかる効率の悪い悠長なやり方をしていた。

それで撮れた庭に咲くチューリップの写真は今でも忘れられない感激をもたらしたものだが、小画面の宿命と言うかシャープさ不足は否めず再度この年になって作り出したときも6 x 9判にいきなり手をつけたのも少しでもシャープさを欲しかったことによるし、裏紙付きのブローニーフィルムがフィルム巻き上げ機構製作において、35mmフィルムのそれより遥かに簡単だったことによる。

しかし35mmフィルムでどこまでの描写が出来るのかをやはり再確認したいのと、ピンホールカメラ製作の敷居をもっと低くする方法として構想をまとめてみた。 とりあえず35mmフィルムでどこまでの描写が期待できるかのシミュレーションをしてみたのだが、これが意外に行けそうである。

6 x 9判(実画面 84 x 56mm)、焦点距離35mmのピンホールで撮影した一例。 35mm判換算15mmの超広角!

上から35mm判実画面(36 x 24mm)を切り取り同じサイズに拡大した35mm準広角写真。 これはいけそうだぞ!

上の2枚を比較して頂ければおおよその見当がつくが、画面全体のシャープネスは低下するものの、周辺光量低下のはなはだしい画面周辺がなくなることにより超広角の面白みはないが、十分に見られそうな写真になっている。 この場合35mmレンズで撮影したものに相当するから準広角というか標準レンズといっても問題ない画角になる。

さてこれで結構楽しめそうだと言うことが判ったが、ボディーをどうするかが問題。 最も簡単なのはレンズ交換式の1眼レフ或いはレンジファインダーカメラを使うことで、通常のレンズを外してその代わりにピンホールを取り付けてしまえばよい。 但し1眼レフの場合はレンズマウントとフィルム面の距離(フランジバックという)より短い焦点距離の採用はミラーが当たるため実現しにくい。
手持ちのボディーを中心に幾つかのメーカーのボディーとそれぞれのフランジバックを調べたら次のようになった。

  マウント名   フランジバック (mm)   マウント内径 (mm)  

  ニコン F   46.5   44.0  
  キャノン EOS   44.0   51.2  
  キャノン FD   42.0   47.9  
  ミノルタ SR   43.5   42.0  
  ミノルタ α   44.5   46.0  
  プラクチカマウント   45.5   42.0  
  ライカ L   28.8   39.0  
  ライカ M   27.8   41.0  
  コンタックス G   29.0   44.0  


これをみると1眼レフの場合メーカー間で差はあるもののフランジバックは40mm以上となっており、広角感のある撮影は難しいが、ピンクで示したライカLライカMコンタックスGの場合何れも30mm以下でありマウント面にピンホールを貼り付けるだけで広角感のある撮影が可能だ。

Nikon 1眼レフ用のピンホールレンズ製作

ピンホール写真は短焦点(広角)のほうが面白みのある写真が撮れやすい傾向があるため、ライカマウントにしたいところですが、ライカマウント用のボディーキャップの入手性が良くないのでNikon用のピンホールレンズを作ることにしました。  何故Nikonを選んだかは大変簡単で、手元にF80sNew FM2の2台を所有しており、初代のNikon Fからマウントの規格が全く替わっていないため、対応できるボディーが多いのもありがたいところです。 特にミラーアップ対応のボディーでしたら相当焦点距離を短くすることが可能です。

 日本光学が販売しているボディーキャップはBF-1Aと言いますがプラスチック製とは言えたった\336.-でした。
 いきなり加工する前に一応寸法をノギスで測りどんな焦点距離が可能かを調べました。

 左の図をクリックするとその結果をご覧頂けます。  図そのものはかなりいいかげんですが、肝心な部分の寸法は何度
 も確認してあります。


 まずタイプ1ですが、1時間もあれば完成してしまう簡単に作る方法で、ボディーキャップの真中
 に5-10mm程度の穴をあけそこにピンホール板を貼り付けるだけです。(右図参照。)
 これは簡単だけでなくピンホールの位置が両面とも奥まった所になりますので、ピンホールを痛
 めないためにも有利ですし保管時にもかさばりません。
但し焦点距離は48mmと標準レンズ領域となり、撮れる写真の面白みはあまりないかもしれません。


 タイプ2はちょっぴり複雑な加工を必要とします(のんびりやっても半日で終わります!)が、フー
 ドを付けて余計な迷光に邪魔されないようにし焦点距離もぎりぎりまで短くしたもので、左の図
 のようなものです。

 図中ブルーの部分はFAXのロールペーパーの芯を切ったものを使い、ベージュの部分は厚さ5mm3mmの板を丸く切り
 抜きロールペーパー芯の両端に貼り付け、底面にピンホール板を貼ります。

 この面はマウント面より8mmフィルム面に寄ってますが、Nikon F用交換レンズ後部の突出量を測ったもので、ここまで
 の突出ならミラーが当たることはありません。 但し周辺はちょっと飛び出てもクイックリターン機構のレバーに当ってしま
 うので、ピンホール板を貼る板は直径を小さくした3mm厚としています。

この場合焦点距離は約39mmとなり準広角ですが、標準レンズに比べればワイド感は増してくるはずです。 ということで、両方の方法で作ることにしました。 

更に短焦点としたいときにはミラーアップ機構付のカメラなら可能ですが、現在販売されているカメラではそのような機構は付いてませんので、旧型のボディーでそのような機構が付いている物で実現するしかありません。 その意味でもライカMマウント、ライカLマウント或いはコンタックスGマウントの方が簡単に短焦点を実現できます。 さて製作の様子は以下の写真でご覧下さい。

Nikon 1眼レフ用のボディーキャップ。 純正品だが税込\336.-と安価です。 これにピンホール板を貼っただけでピンホール写真を楽しめます。

ボディーキャップを裏側から見た所。 このキャップはABS樹脂ではないかと思うのですが、どうでしょうか?

タイプ1の製作開始。 ボディーキャップの中央にの穴をあけました。 バリは綺麗に取っておきます。

両面をつや消し黒で塗装したピンホール板を裏に瞬間接着剤で固定して完成です。 これは超簡単!!

タイプ2の製作開始。 複数の穴をあけてニッパーで切断しヤスリを掛けてと考えたのですが、結局ジグソーで簡単に丸穴を切り抜くことが出来ました。 マスキングテープは傷防止のため。

ジグソーCJ-250)で切り抜いた後替刃式丸ヤスリRL-330P)で仕上げました。 こんな小さなものを加工するには小型のCJ-250はもってこいです。

FAXのロールペーパーの芯で厚みが約5mmあり、これを長さ12mmに切断し鏡筒としました。 切断には替刃式ノコギリ翔 250を使用したが、実に切り口が綺麗です。

切断した鏡筒に前カバー3mm厚アガチス)を貼り付け。 不要光線をカットする四角の窓を切り抜いてあります。 この後ヤスリで成形しました。

こちらは裏に嵌め込む丸板で大きい方が5mm厚、小さい方は3mm厚で、中心に穴をあけてあります。 尚この丸板がボディーキャップにきつく嵌るとボディーキャップが変形し、ボディーキャップがカメラボディーに固定できなくなるので、ほんの少し緩めにした方が良いです。

ピンホール板と共に表面を無光沢黒で塗装後瞬間接着剤で貼り付けました。 この後この面も無光沢黒で塗装します。

塗装が済んで穴のあいたボディーキャップに裏から嵌め込み瞬間接着剤で固定しました。

表から見るとこんな按配です。 拘らなければこれでもう写真が取れます。

フード兼鏡筒はつや消し黒で塗っただけでなく、ジウジアーロがF3で採用したアクセントカラーの赤で帯を入れました。

そしてボディーキャップ表側から嵌め込んで完成です。

 左がF80Sに付けたタイプ1のピンホールレンズ48mm)で、右はNew FM2に付けたタイプ2のピンホールレンズ
39mm)です。  逆の取り付けも可能ですが、デザイン的には赤のアクセントの関係でこれが気に入ってます。


 製作したタイプ1タイプ2のピンホールレンズをNikon F80sボディーに取り付けて試写した写真の一部をご覧下さい。
 但しタイプ2のピンホールレンズは、フード部分の嵌め込み不十分かケラレが相当発生しておりましたので、最初の一枚
 のみ掲載します。 これはピンホール自身の問題ではないことは言うまでもありません。




Tamron 28-200ズームを39mmにセットして同画角の比較撮影。 露出 F11 1/500秒 富士ネガカラー400

タイプ2で撮影。 おっとフードの差込不十分で大幅にケラレが出ています。 露出 F240 4秒 富士ネガカラー400

Tamron 28-200ズームを48mmにセットして撮影。 このレンズ、赤味が強く出るようです。 露出 F11 1/500秒 富士ネガカラー400

タイプ1で撮影。 シャープネスは全くかないませんが、これはしかたない。 露出 F240 4秒 富士ネガカラー400

Tamron 28-200ズームを48mmにセットして比較撮影。 露出 F8 1/180秒 富士ネガカラー400

タイプ1で撮影。 ソフトフォーカスが却って良い雰囲気を出しているかも?! 露出 F240 4秒 富士ネガカラー400

Tamron 28-200ズームを48mmにセットして撮影。 絞りをF16に絞りどこまでピントが合うか? 露出 F16 1/500秒 富士ネガカラー400

タイプ1で撮影。 蛇口は別として遠くの背景はこちらの方がピントが合っている? 露出 F240 4秒 富士ネガカラー400

Tamron 28-200ズームを48mmにセットして撮影。 露出 F5.6 1/90秒 富士ネガカラー400

タイプ1で撮影。 この程度の画面サイズだとあまり違いがわかりません!  露出 F240 12秒 富士ネガカラー400




2005/06/17

39mmピンホールやっと修正

ほぼ1年間ほったらかしにしていたフードのけらにより改善が必要だった焦点距離39mm判を手直ししました。 途中まで分解して原因を究明した所、紙パイプのチューブの長さが約1mm長いこと、ピンホール板の貼り付け位置が約0.5mmずれていたこと、フードの開口が設計値に対して約0.5mm大きかったことなどが複合されて起きたということが、ノギスによる測定で判りました。  そこで木工ヤスリでフード開口を1.5mm広げ、ピンホール板を貼りなおし、更に紙チューブも紙ヤスリで削って組み立てなおしボディーに取り付けてシャッターを開けたままで裏ブタをあけピンホールからの光がけられていない確認した上で塗装して組み立てなおしました。

早速テスト撮影しましたが、全く問題なくこれでNIKON用のピンホールレンズ2種(48mm39mm)はやっと完成しました。 デザイン的にはジウジアーロ風赤のアクセントラインも若干太めにしましたが、New FM2がやはりベストマッチであると思います。 またファインダーはたまたま持っているフォクトレンダーの50mmファインダーをアクセサリーシューに取り付けて使うことにします。

1眼レフに外付けファインダーというのも奇妙な光景ですが、本来のファインダーは暗くて薄らぼんやりとしか見えませんので、しかたありません。  50mm用ですから48mmピンホール用にはそのままファインダー内のフレームを使って差し支えありませんが、39mmピンホールの場合ファインダーを覗いて見える円形の視野全体を使ってフレーミングすればほぼ問題ないはずです。  理想論を言えばフォクトレンダーの40mmファインダーというのがありますが、2万円以上の投資が必要ですし、そこまで拘っても得るものは少ないでしょう。 むしろ今実験中なのですがジャンクのコンパクトカメラ35-70mmズーム)に付いているズームファインダーの流用に期待しています。

問題を解決した39mmピンホールレンズとフォクトレンダーの50mmファインダーをNikon New FM2に取り付けました。 フードの開口が一回り大きくなっています。 このパンケーキ風のルックスは大変気に入っています。

ジウジアーロデザイン風赤のラインがチャーミングポイント。 外付けファインダーが異様に見えますが?

Nikonボディーを使ったピンホールカメラ兄弟。 左F-80sより右New FM-2の方が賢そうに見えます?!


 この後我が家の玄関近くにある花で焦点距離48mmとの比較撮影をしてみました。
 かなりのうす曇で時刻も17時を回っており更に日陰とあって発色は良くないのですが、スモールフォーマットながらなかな
 か味のある写りをしてくれたコマもありました。 
 共通データは、フジネガカラーISO800、カメラボディーはNikon New FM-2です。 4倍の大きさの写真はライブラリーに
 掲載しましたので、こちらからご覧下さい。



左は焦点距離39mmの今回完成したピンホールで、右は既に完成していた48mmのもので同じ位置から撮影しました。
写真レンズで言えば準広角と標準レンズの違いとなると思います。

これも左が39mmで右が48mmです。 4隅を見ると周辺光量の低下があることが確認できますが、もっと短焦点の物と比べると僅かであり、特に48mmの方は殆ど気にならないレベルです。 

たった9mmの焦点距離の違いででありながら、39mmの方が僅かにシャープに見えるようです。  これは焦点距離が短い方が感光面上での点像が大きくならないことと回折効果の影響も少ないためで、理屈に合っていることです。

35mm判でも画面構成次第で充分楽しめることも確認できました。  何と言っても半日あれば完成してしまう1眼レフカメラボディー流用は気楽ですし、通常撮影の合間にレンズをピンホールに交換して!という芸当や大量の撮影も問題ないのですから。

----- 完 -----
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