周辺光量低下 技術的考察INDEXに戻る Home Pageへ

 2.周辺光量の低下が大きい
  レンズを使った写真でも発生するが、ピンホール写真において顕
  著に起きるものとして周辺光量の低下がある。
  簡単に言えば中心から離れるに従って感光面に届く光が弱くなっ
  てしまう現象で、その原因としては3つありそのうち2つは改善す
  る手はない。  写真工学においては「コサイン則」と呼ばれて
  いるようだが、これは光量の低下の程度が、画面中心からの傾き
  角のコサインに連動しているからである。

  第一が左の図のシチュエーションで、周辺ではピンホールからの
  距離が増大することによる光量低下で、その距離の二乗に反比
  例
する。  別な表現では、中心光量を1としたときに、θだけ傾い
  た位置では、(cosθ)2となる。 cosθは常に1よりも小さいので
  その二乗となる光量低下率は大変大きい。
  因みに撮影画角が90度の場合35mm判で21mm広角レンズ
  の対角線上の画角に近い。)
周辺での光量は半分に低下する。


第二はピンホールが正しい円に出来上がっていてもそれを斜めから見るとラグビーの
ボールのようにつぶれて見える現象で、光束断面が細くなってくるため光量低下を起
こす。 (右の図を参照。)

 この場合光束の断面
 積は中心からの傾き
 をθとすると、中心で
 はの場合cosθに低
 下する。
 撮影画角が90度の
 場合、これにより光量
 は70.7%に低下して
 しまう。

 以上2つの要因は必ず同時に発生するので両方が合算され中心の光量に対
 し周辺では(cosθ)3に低下することになる。





 第三の光量低下の原因としてピンホール板の厚みがある。
 ピンホールの周辺は厚みがゼロであることが理想だが、現実にはそれは不可
 能で何がしかの厚みが存在する。  (下の図はピンホールを斜めから見たと
 きの違いを表しており、空色の部分が光を通す部分となっている。)


先人の研究や実験結果ではピンホール径に対しピンホール周辺の肉厚が1/20
以下であれば、この原因による周辺光量低下はほぼ影響なくなりそうであるが、
仮に0.2mmのピンホールを作るとすると、0.01mmの厚みを要求することになり、
これは板というよりも箔のレベルである。

従って材質によっては穴の物理的強度が低下し正確で且つ安定性の高いものを
作るのは困難が伴ってくる。

メーカーが作るピンホールの一方法として、
「光学ガラス面に薄膜を形成した上にエッチングによってピンホールを作る。」という
のがあり、高い精度と安定性を両立させているが、アマチュアの自作でどこまでそ
れらに肉薄できる物が作れるかは、チャレンジであるのと同時に面白さに繋がると
も言えないことはない。






Copyright (C) 2001-2011, Vic Ohashi All rights reserved.