ボケた映像 技術的考察INDEXに戻る Home Pageへ

  どんなに頑張ってみてもピンホールカメラによりカリカリに
  シャープな画像は撮影できない。  その理由は明快で、
  光学レンズを使ったカメラの場合、レンズの屈折を利用し
  て1点に結像させようとしているわけだが、ピンホールで出
  来る映像には結像させようとする行為が伴わない。

  撮影しようとする物体の1点から出た光は、ピンホールと
  いうある大きさを持った穴を通過する光束が直進し感光面
  に到達し映像を作るので、そもそも点になるはずがない。

  左の図を見ればその違いが判ると思うが、ピンホールに
  おいて映像をシャープにするにはピンホールの直径を小さ
  くすればよいことも想像がつく。
  しかしこれにも限度があり、光の回折現象(光が直進せず
  回り込みを起こす)
があって、小さくしてもあるレベルから
  映像は小さくならない。
  従って回折現象を織り込んだ結像が最少となる適正
  なピンホール直径
が焦点距離によってある。

  原理的にピンホールの直径より小さな結像はありえない
  ので、ボケた映像から逃げることは不可能なわけである。

  これで終わってしまったのでは面白くも何ともないのだ
  が、もう少し左の図を眺めてみると、実効的によりシャープ
  な映像を手に入れる方法は幾つかある。


よりシャープな映像を得る方法

大きな画面の採用

例えば35mmフィルムで撮影するのと(実画面 36 x 24mm)、ブローニーフィルムで6 x 9判(実画面84 x 56mm)で撮影するのとでは、画面の面積比は5.4倍の違いが出てくる。 ピンホールで出来る実映像は大きめでも、大きな画面にはより多くのピンホール映像が取り込めることになるから、シャープネスは大幅に改善できる。  大きな印画紙でピンホール写真を撮ろうとする考え方は、正にこの原理を用いている。  逆にどれほど解像度が高くても元々の大きさが小さいデジカメ用の撮像素子は、ピンホール写真においてはその高い解像度を生かすことは不可能である。

短い焦点距離

上の図を見るとピンホールから結像面までの間で光束が僅かに広がっているのが判る。 ピンホールの直径よりも撮影される円盤状の直径はこのために大きくなる。  因みに回折現象を無視した場合の焦点距離50mmと100mmの直径0.3mmのピンホールで、3mの距離にある点を撮影したときの映像を計算した所、前者は直径0.315mm、後者は0.316mmとなった。 撮影距離が更に1mと近くなると、前者は0.315mm、後者は0.33mmと像が大きくなる。  これらにより少しでもシャープな映像を求めるのであれば、焦点距離は短い方が有利となるが、その効果は前述の撮影画面の面積の方が圧倒的に大きい。

Copyright (C) 2001-2011, Vic Ohashi All rights reserved.