6 x 6判ステレオピンホールカメラ 自作カメラINDEXに戻る Home Pageへ

製作期間: 2003/09/19 - 2004/07/09 (間に6ヶ月の中断期間あり)

構 想

ピンホールカメラ第1号を製作後色々な反省をした中で最も大きかったのは、加工難易度が高く作りにくかったことが挙げられます。

動作上はほぼ完璧ではあったのですが、結果としてピンホールカメラとしては必要以上の内容・構造にしてしまい、これが難易度の高い工
作に繋がったと考えています。  早い話がやりすぎであったということです。

そこでそのような反省を踏まえてもっと敷居を低くしたものに再度チャレンジということで、新たなピンホールカメラの構想検討に入りました。

本構想はまだ詰まりきっていませんが、1号機を振り返って現在の所次のような途中経過となっています。

  1.6 x 9判と焦点距離35mmの超広角(35mm判換算15mmの焦点距離)は面白い映像が取れるが、画面周辺の画質劣化、露出不
    足などの問題があるのでもう少し画角を小さくしても良いのでは?

  2.使用フィルムは巻き取り装置の作りやすさ、撮影駒数確認が容易なのでブローニーフィルムを再度使いたい。

  3.いっそのこと6 x 6判のステレオカメラとして実現できないだろうか?(ブローニーフィルムで6組撮影可能。)

  4.基本構造や寸法は1号機の経験を生かすため1号機の延長とする。

といったものです。

 1.3.を考慮すると6 x 6判に焦点距離35mmの組合せになりますが、6 x 6判の標準レンズの焦点距
 離は約80mmとなっていますから、35mmの場合の標準レンズの焦点距離を仮に50mmとすると、35mm判
 換算では、35 ÷ 80 x 50 = 22mmとなり、これでもかなりの広角です。

 6 x 9判の1号機で撮影した画面の左右を均等に落として正方形にしてみると、画像周辺の光量
 低下や画質低下はかなり改善される事が判ります。 (左の写真をクリック!)

 この場合1号機を作る時に作った残りのピンホールが流用できます。
 35mmの焦点距離に最適化してあり製作作業の手間が省ける。)

 2.については大判で作った方が画質がよくなり、裏紙つきというブローニーフィルムは自作カメラ
 には絶対有利であり深く検討する余地はありません。

3.が何故出てきたかというと、人間が立体視出来るのは目が2つあるからですが、その目の間隔は個人差があるものの63-65mmだそうです。 一方手元のブローニーフィルムの裏紙に印刷された6 x 6判撮影駒数表示の間隔は実測で63mmあります。 (人間の目の間隔に近いわけです。) そうすると2駒連続で撮影した左右の画像をステレオビューアーで見るときに、密着プリントした物を使えるわけで合理的です。 6 x 6判で正方形の画面ですから、縦位置撮影、横位置撮影なんていうことを考える必要もありません。

ところでシャッターのところをちょっと工夫し片方しか撮影できないようにすれば、ステレオ撮影と通常撮影の切替も可能ですから、この面でも面白そうな使い方が出来そうです。

 4.に関しては巻き取り装置の逆転機構を省くかもっと簡単な機構にしようと考えています。 巻き取り軸も
 1号機製作時に3本作った為改めて作る必要はありません。 但しアルミの押出し材をヤスリで削って所定
 の部材寸法に成形する!というクレージーな手法は極力止めようと考えていますが、カメラ本体に2重構造
 の薄板を採用するのは踏襲する予定です。  またシャッターは簡素化を極度に進めたいところです。

 構想段階のイメージ図は左ですが、何のことは無い1号機を横に少し伸ばして正方形のピンホール窓が二
 つ付いたような物で、決して斬新なデザインにはなっていません。
 しかし1号機では寸法的な問題やレイアウト上の問題は幸いにして全くありませんでしたから、それらを踏襲
 することにより難易度を下げようとの魂胆なので止むを得ないところではあります。



最終構想

全体的なイメージや構造は基本的に変えないものの製作の難易度を下げる為に、細かな点の反省を踏まえて一つ一つ潰して行きました。

その結果殆どの部分の構造がこれで良しという所まで来ましたが、前の経験がフルに生かされているのではと思います。 簡単に変更した部分を説明して行きましょう。

1.シャッター
  今回の設計で最もメスを入れ大幅変更した部分はシャッターです。 前作のシャッターは完璧な動作をしてくれておりその点では申し分
  ないのですが、アルミや真鍮の部品点数が余りにも多く改めて数えますと23個の金属部品の加工が必要でした。 

  これを抜本的に改善すべく考えた末コッキングレバーの使用を止め、全ての可動部品が回転運動となるよう考えました。 簡単な構造で
  すが、現在考えている構造では加工しなければならない金属部品の数はたった4点です。
  これは大幅な簡略化ですがそれが出来たポイントは、前述のようにコッキングレバーとシャッターレリーズレバーを別にしていたのを一緒
  にしたこと、可動部分に直線的なスライド機構を3箇所使ったためその受けの部分が複雑だったが、回転式のみとしたので簡単になっ
  た。 の2点です。

  但し簡略したこのタイプにはシャッターレバーが重くなったり、シャッターストロークが長くなる。 間違ってシャッターを切ってしまう。 とい
  うトレードオフがありますが、私自身も少しでも加工作業を楽にしたいために採用しました。
  構想中のシャッターには前作にはないレバーが追加されていますが、これはステレオ写真と通常写真の切替が出来るようにしたもので、
  このレバーひとつで随分と使用価値が上がると思います。(ステレオ写真とはしたくない場合の撮影など)

2.フィルム巻き取り装置
  フィルム巻き取り装置の中の逆転防止機構は何とかしたい部分として考えます。 これも作動上は問題ないものの今は入手不可能なオ
  ーディオ部品を流用してというのでは再現性が余りに悪く現に私ですら同じ機構をもうひとつ作れないのです。

  最終的な設計は出来ていないものの、入手容易な材料で同様な目的を果たせるよう考えることにします。

3.本体の金属部分
  フィルム巻上装置が固定されるからと3mmのアルミ板を使った所は同じ厚みの板に置き換えます。 幸い巻き取り軸のフランジ径が大き
  いのとポリカーボネートのワッシャーをかませることもあり磨耗による問題発生は殆どないと思います。

4.フィルムガイドレール
  これも前作ではアルミ板を削って作りましたが、プラスチックの板に置き換えます。 フィルムと摩擦して発生する静電気が悪さをする可
  能性があるとも言われますが、駄目であればアルミ板に戻します。

5.ファインダー
  前作ではフォクトレンダーの超広角のファインダーを流用することでかなり手抜きをしながら完璧な使い勝手を実現しましたが、画角正方
  形のファインダーの入手はほぼ不可能です。 (2昔前であれば画面が正方形の126フィルム用の安いカメラがいっぱいありましたからジ
  ャンクから流用なんてことも可能でしたが。)


  ここはスポーツファインダーを自作するっきゃないかな?と考えています。 スポーツファインダーなんて何となく格好良さそうな名前です
  が、何のことはない正方形の枠と覗く目の位置を指定する部品が付いただけの簡単な物です。
  但しそうでなくとも本体が大きいのでファインダーは折畳式にしないとなりません。 この辺りがちょっとやっかいです。

以上を元に構造のイメージを描いてみました。 極めて前作に似ていますがそうすることにより各部の寸法計算は非常に楽になります。



シャッターの製作

シャッターについては別項で解説していますのでこちらをクリックしてご覧下さい。



ボディーの設計

 いよいよボディーの製作ということで詳細設計と、部材加工図を描きあげました。
 今回は木部の部分をご紹介いたします。

 基本的に前作の物に大変似通っていますが前作のボディーの基本構造の問題点がなく大き
 さを縮めるのもほぼ不可能なため、ステレオ写真をとるため横に29mm長く引き伸ばした大き
 さになっています。 ボディー構造上では隣のピンホールからの写り込み防止のため2枚の撮
 影画面を仕切る隔壁が追加されただけです。

 巻き取り軸部分の逆転防止機構は前作がこりすぎたきらいがあるので、フリクションを使った
 簡単な機構にしようと考えていますが、詳細はその製作時にお見せしましょう。
 それとバックテンションを与える機構はバネの固定位置を変更しフィルムの装てんをしやすく
 しました。

 撮影枚数確認窓は6 x 9判を採用した前作では中央下にありましたが、左側の撮影画面の
 中央に移動しています。 これは 6 x 6判の場合には裏紙の中央に撮影枚数の番号が印
 刷してあるからです。  

そして確認窓のカバーは前向きな手抜きのつもりで省略します。 外部の光でフィルムが露光してしまうチャンスがないではありませんが、極力内部の遮光を厳重にして防ぐことにします。

ところで撮影枚数はステレオ写真の場合6セットとなりますので、1357911の数字が見えるように一駒飛ばして巻き取らねばなりませんが、シングル撮影をするのであれば、飛び飛びではなく撮影できますしステレオとシングルのチャンポンも可能ですが、勘違いしないように巻き取る必要があります。

例えば、ステレオ写真を2枚続けて撮影しシングル写真を3枚取りまたステレオ写真を撮る場合には、135678 ・・・ のように巻き取らなければならないことになります。 極めて原始的方法で勘違いを起こしやすいですがこれを自動的に判別させるとなるととてもじゃないがアマチュアの自作の手には負えなくなりますのでやむをえない所です。

まあチャンポン撮影を止めてどちらかのモードでの撮影に専念すべき所でしょうか?

設計図には一応描いてみたもののまだ思案中な部分にファインダーがあります。 前作ではフォクトレンダーの15mm広角レンズ用のファインダーを共用するということでうまく逃げられましたが、正方形画角のメーカー製のファインダーは先ず入手不能でしょう。

そこで所謂スポーツファインダーと称するものを自作するしかありません。 それでも目的は十分に達成できるものの無骨な感じがするのと使用しないときにかさばるので、折り畳み構造としたいのですがどうもイマイチピンと来ていません。

これは歩きながら考えないといけない部分です。 その他には特に前作と変わったところはありません。

尚今回はまだお見せしていませんが、金属部品は大幅に少なくなります。 シャッターコッキングレバー、シャッターリリースレバー、撮影駒数確認窓カバーが省かれ、フィルムガイドレールも木製の物に変更しようとしています。

そうすると残る金属部品は既に完成しているシャッターユニット、巻き取り機構、フィルムスプール押さえの銅リベットとアルミ板、スプリング、そして三脚に固定する台座で、これにより製作はかなり楽になる筈です。



本体組立てその1

前作のものと非常に似た構造ですから特別どうという事もないのですが、製作手順を写真でご覧ください。

切断した本体内層部分の材料。 総てアガチス材を使っています。

撮影画面枠と隔壁3枚を接着。 ハタ金で密着度をアップしています。

隔壁固着後内層底板を接着。 これだけハタ金を使うのは少々オーバーな感じがしますが!

密着度を上げたため組み上げ後の寸法誤差は0.2mm以内です。

撮影枠の内側反射防止のため斜めに削った所のアップですが、これが結構大変でした。

更に内層前板を接着。 ハタ金以外にクランプまで登場!

前板接着が終わり薄板の貼り合わせにもかかわらず撓みにも随分強くなってきました。

内層底のスペーサーを貼り付け。 これだけ12mmシナ合板です。

ここまでの作業時間が10時間以上。 一つ一つ組立てながら寸法の肥大化を修正しているのと接着剤乾燥後に次のステップに入れるためです。 肥大化の原因の一つは接着剤の厚みで、クランプやハタ金で密着させても重ねるたびにサイズは大きくなりますから、その分削らないとなりません。 このあと金属部品の取り付けになります。



本体組立てその2

金属部品を切断しヤスリで仕上てさあ組み付けという所まで来て、とんでもないことに気がつきました。 これら金属部品はエポキシ接着剤でカメラ本体に固定するのですが、買ってきたエポキシ接着剤はなんと硬化時間が8時間掛かるタイプだったのです。

5分硬化型などは手早く作業しないとならないのと「早く硬化する」「硬化が不完全?」みたいなものを感じているので(特に根拠があるわけではありません?)通常は60分硬化型を使ってきたのですが、まだそんなに硬化時間が掛かるものが存在するとは夢にも気付かないで購入した私のミスです。 しかしだからといって捨てるわけにも行かないのでそのまま作業をしました。

よって時間が掛かるわ掛かるわ!! 先週以上にのんびりとした作業に相成り結局目標とした所まで終了しませんでした。
そんなミスもありながらも接着部分は心なしか以前の1時間硬化型を使ったときよりも完璧な仕上がり?(気休めですかね?)になっているように思えます。

ということでフィルムガイドレールの接着まで進みませんでしたが、スプール受け部分、巻き取り軸の固定、スプール押さえの3点を本体に固定し内部をつや消し黒で塗装する所まではなんとか進んでいます。  それら遅々とした作業の様子は以下の写真をご覧ください。

購入したエポキシ樹脂系接着剤。 なんと8時間硬化型!でした。

この部分に使うフィルム押さえを除く金属部品。 巻き取り軸の詳細は前作を参照ください。

スプール押さえ板に蝶番と銅リベットを接着。 硬化のために結局1晩寝かしました。

巻き取り軸の固定も小さなアルミの巻取り軸ストッパーをエポキシで接着で対応しています。

スプールゆるみ止めは0.3mm燐青銅板を切って折り曲げて作りました。 これもエポキシで接着します。

スプール押さえとスプール受けを本体に接着した所です。 これでまた10時間寝かせました。

接着の終了したスプール押さえ(フィルム緩み止め)とスプール受け。

巻き取り側のスプール受けでこれを底側からスプリングで押してやります。

後では塗りにくい部分をつや消し黒で塗りつぶし、底板を貼りました。

側板2枚と上板を貼り付けましたが、隙間が出ないようずれないように貼り合わせるのは大変。 

 フィルムガイドレールの貼付けを除き、本体内装部分の組立てが終わりました。 底の中央に三脚固定用のアルミ板も埋
 め込みエポキシで固めてあります。 エポキシの硬化速度のせいで今週ここまでに20時間以上掛かっています。

 一応確認のためスプリングを挿し込んでハタ金で仮に押さえ、フィルム・空スプールを装てんしてみました。 平行性や直
 角性に問題なくスムーズに巻き上がるようです。 組立て後の寸法は設計値に対し0.2-0.3mm大きめとなっています。 




本体組立てその3

フィルムガイドレールを作り次に巻き取り軸の逆転止め機構を組み立てました。 構造としては最も簡単なフリクション型で、その構造は巻き取り軸に細い板バネを巻き取り方向とは反対方向に巻きつけておきます。 外層の板の巻き取り軸の出る部分は11mmの貫通穴としておきます。 この穴に巻き取り軸に巻き付けた板バネを納めます。 巻き取り方向に軸を回した時は、バネには巻き締める力が加わりバネの最外周の直径は小さくなる方向になりますから問題なく回転しますが、逆方向に回すと板バネには最外周の直径が大きくなるような力が働き板バネと外層の間の摩擦が大きくなって回らない!という仕掛けです。

原理は単純明快なのですが、どうやって板バネを巻き取り軸に確実に固定するかが問題でした。 いろいろ考えた私の結論は、2枚の板バネの先を巻き取り軸にぴったり収まるよう曲げて巻き取り軸に取り付てバネ同士を半田付けして繋ぎます。 その後エポキシで巻き取り軸に接着したのですが、接着を確実にするため、巻き取り軸の表面をヤスリでこじって粗くしエポキシの食いつきが良くなるようにしてやりました。

接着後10時間放置し巻き取り軸は組みあがりです。 動作はバネを使ったフリクションタイプ独特の粘るような感触はありますが、逆転はせず目的を達しています。 更に手許にあったオーディオ用のツマミの中から適当な物を選び取り付けてこの部分は完了です。

次がスポーツファインダーの枠作りですが予想していたよりも淡々と進みました。 材料は直径2mmの真鍮棒でこれを直角に曲げながら所定の形に仕上、補強の短い棒及び沸くの最初と最後の部分3箇所は半田付けとしています。 半田付けは溶接に較べると遥かに接合能力が低いですが、構造を考えて半田付けでも問題にならないと思われる繋ぎ方をしています。 完成後ノギスで測った所設計寸法に対して±0.3mm位に収まっていましたから、バイスでくわえて曲げた細工にしては上出来と考えています。 尚このフレームは内寸が55mmで外寸が59mm、フレームから見口までの距離が37mmありますので、計算上ではフレームの外寸で視野率約100%、内寸では視野率87%ということになり、十分実用に耐える仕様であると思います。  またこのファインダーは折畳式となりますがその辺りの構造は後ほどご紹介します。

バックテンションを与える機構は単純な板バネで軽いブレーキを与えるだけです。0.4mm厚の燐青銅板を切って右側板の内側にエポキシ樹脂で貼り付けました。

PET板を細く切ってボンドG17クリヤーでフィルムガイドレール4本を貼り付けました。 若干はみ出た接着剤は塗料シンナーで落としました。

右側がレール部分のクローズアップ。レールの下地の塗料を削ったためちょっと汚らしいですが、機能的には問題ありません。

0.3mmの燐青銅板を4mm幅に切断したものを2本。 これが逆転防止装置の部品です。

先端の一方は巻き取り軸に密着するよう丸めてあります。

巻き取り軸に2本の板バネを引っ掛けてバネとバネの重なった所(矢印の先)を半田付けし2本のバネを接続します。

巻き込みやすいようにカールの癖を強く付け組立て準備に入ります。

外層上板にバネを嵌め込み木工ボンドを塗り、巻き取り軸にはエポキシを塗りつけた後、スプリングを軸に嵌め込みながら外層上板を接着。 ハタ金で締め付けました。 エポキシ部分を加熱して隙間に沁みこませ、10時間放置。

巻き取り軸の先はこのようになっています。 エポキシでの接着もうまく出来たようです。

古いテープレコーダーに付いていたツマミを巻き取りツマミとして使いました。 後で適当な色に塗るつもりです。

こちらはスポーツファインダーの枠が出来上がったところ。 これだけでは判りませんが折りたたみ構造にするつもりでいます。 材料は2mmの真鍮丸棒。

3個所半田付けしたところ。 実は中央部は短い真鍮棒を挟んで半田付けしてあります。 この方が強度が取れやすいと考えたからです。

バックテンション(ブレーキ)を掛ける部分は0.4mm厚の燐青銅板を切ってこのように曲げて作りました。 そしてエポキシで本体右の内側の面に貼り付けています。

 内部のからくり部分は総て完成。 この写真にはないファインダーを含めいよいよ外層部分を貼り付ける所まで来ました。



本体組立てその4

外層部分を貼り付けて箱としての組立てが終わりカンナと木工ヤスリによる一次成形を施し、ファインダー部分の加工組立て、シャッターにステレオ写真 ←→ シングル写真切替レバーを取り付けるところまで進みました。

これで残るのは前カバーの加工・組立てをした上でピンホールとシャッターユニットを取り付け、フィルム厚板の固定。裏ブタのロック取り付けそして箱の最終成形(#400ペーパーによる。)と塗装ということになります。 完全にゴールが見えてきた!という感じです。

ファインダーはその後またこだわりが出てきて畳んだ位置、起こした位置で止まるように燐青銅板のスプリングで押さえ込む構造にしました。 この辺りは現物合せに近い作業としましたので図面には描いてありませんので写真でご覧下さい。 もうちょっと強力なスプリングがあれば、よりカチッと決まった感じで折り畳んだり広げたり出来るとは思いますが、ファインダー枠受けに木部も一部あるので、壊れないようにするにはこの程度が限界かなという気がしています。

シャッターの追加機構(ステレオ写真 ←→ シングル写真切替)はその後特に名案がないので当初考えたとおりに作り上げました。

外層部分貼り付け準備。 底板は三脚座のアルミ板突出部分を掘り込んでから貼ります。 左右の穴にはスプリングを嵌め込んで底板を固定します。

底板、側板2枚を一度に貼り合せたのでご覧のように手持ちのハタ金全部を使っています。

裏ブタの枠をご覧のように現物合せで貼り合せています。 はみ出た木工ボンドが本体につかないようサランラップを被せてから接着しています。

次に前板を貼りました。 継ぎ目に隙間が出来ると見苦しいのでハタ金を沢山使っています。

裏ブタ枠に裏ブタを接着している所で、これも変なゆがみが出ないよう現物合わせとしており、本体に木工ボンドが附着しないようサランラップで保護してあります。

こうして本体の箱が組みあがりました。 ここまでで6時間以上を費やしています。

箱に丸みをつける一次研磨はカンナで粗削りした後替刃式木工ヤスリ(お気に入りのNTドレッサー M-20GP)で目的とする形にしました。 更に塗装前に仕上研磨を#400のペーパーでやります。

ファインダーを構成する部材。 2mm厚アルミ板の台座と見口、0.4mm厚燐青銅板、12mmの小さな蝶番と既に作ったフレームから成り立っています。

台座のひとつを本体上面の中央にエポキシ接着剤で貼り付けました。

もうひとつの台座には見口が蝶番を介して取り付きますので、エポキシ接着剤で貼っています。 これで6時間寝かせます。

その間にシャッターにステレオ ←→ シングル切替レバーを0.4mm真鍮板から切り出し、成形して取り付けました。 これはシングルの状態でシャッター羽根を覆いピンホールには光が入りません。

こちらはステレオモードでシャッター羽根を覆っていませんからピンホールを通して露出が与えられます。 なにやらヤスリの跡の反射で見苦しいですが、無光沢の黒で塗れば綺麗になります。

見口を貼った後ろの方の台座もエポキシ接着剤で本体上面に固定し、ファインダー枠をこのように落とし込みます。 見口は蝶番で右側に折り畳めます。

その上から燐青銅板で作った押さえ板をネジ止めしました。 これでファインダー枠は使用位置か収納位置の何れかに収まりぶらぶらしなくなります。

前から見たファインダーを開いた所です。

こちらは後ろから見た様子です。

折り畳むには見口を前のほうに倒します。

次にファインダー枠を後ろに倒しご覧のように裏ブタに沿って収まりますので、使用しないときにかさばらなくなります。



本体組立てその5

前カバーの枠を作りステレオ、シングル切替レバーが出る部分そしてケーブルレリーズソケットを取り付けて本体の座繰り加工とシャッターユニット裏にピンホール板を貼り付け仮組立てをし総ての作動がOKであることを確認しましたので、シャッターユニットをばらしつや消し黒の塗料で塗装後再組立てしたのですが、シャッターセクターが動かなくなってしまいました。

シャッターセクターを僅かに曲げてみたり、シャッターセクターの回転軸の締め具合を緩くしたり、スプリングの強さを変えてみたりしたのですが、全く駄目。 ここで慌てて変なことをしたら取り返しがつかなくなりますので作業を中断しこうなってしまった原因を考えました。 シャッターセクターが台座に触れる部分の摩擦が塗装によって増えているためであるのは間違いないのですが、だからといってその部分にオイルを加えるわけには行きません。(埃が付いて長期間では更にトラブルがひどくなるためです。) グラファイトの粉を塗りつける手もあるのですが、その粉がピンホールに付いたらこれまた問題です。

 コーヒーを飲みながらさあどうしたものかとシャッター
 ユニットを持って眺めつすかめつしていたところとんで
 もないことを発見しました。(左図参照)

 シャッターセクターを回転させるためのスプリングを真
 横から見たところシャッターセクターの右端が引っ張ら
 れて約1mmも浮上っています。
 これだけ浮上ると遮光不十分で感光してしまう可能性
 が大です。 そしてシャッターセクターの反対側は座
 板に当たってこすれています。

 そこで右端の浮きを押さえるべく0.5mmのスペーサー
 を挟んでその上から銅板で押さえてみました。 しかし
 それでは押さえすぎで摩擦が増大し駄目です。
 ほんの僅かスペーサーの厚みを増せば良さそうなの
 で、両面接着テープで固定しその厚み分の増大を試
 した所何とOKではありませんか!
 シャッターセクターと台座の隙間は全体的に0.2mm
 位に収まったので遮光の問題もなくなりますし左端の
 こすれもなくなりました。

両面テープで固定するのは不安定にも思えますが、多分数10グラム程度の応力でしょうから問題ないと思いますし、これで駄目だったら押さえ板の面にテフロンシートを貼って摩擦力を減らせばよく、その点両面接着テープ固定は後からやり直しが簡単に出来ますのでこのままとしました。 念のためにその後200回ほどシャッターを作動させましたが不具合は出ていません。

これで一安心ということで、ファインダー部分の塗装、裏蓋の撮影駒数確認窓の穴あけ、フィルム圧板の貼り付け、残る本体内部のつや消し黒塗装、前カバーの前板貼り付けそして一次成形と塗装前の本体加工は総て終わり、試写に入りました。

フィルム1本を撮影しその結果をお見せしますが、遮光の問題、フィルム巻き上げ、シャッターの作動何れもOKです。 これで塗装が終わり前カバーにフードと化粧パーツを取り付ければ総て終了となります。

シャッターレバーが無くケーブルレリーズがないと撮影できませんが、総てが長時間露出ですからブレを押さえるにはケーブルレリーズの使用はMUSTであり不都合はありません。 むしろ撮影しないときに間違ってシャッターを切ってしまわないためにもこの方が好都合だと思います。

ということでそれらの経過は以下の写真をご覧下さい。

前蓋の枠を組立てたが、あったはずのアガチスの棒が見つからず横の棒は朴の棒にて組み上げました。

左上に出るステレオ、シングル切替レバーが出る部分をヤスリで削りました。 ご覧のように現物合せのかなりいい加減な加工です。 中央の逆三角形部分はストッパーとして働きます。

こちらはケーブルレリーズのソケットで、M4のナットをディスクグラインダーで削り厚みと外形を小さくして埋め込みエポキシ接着剤で固定してあります。 これも現物合わせです。

そのケーブルレリーズソケットを外側から見たところ。 前の写真ほど見苦しくなくなっています。

ピンホール板をシャッター座板裏側に瞬間接着剤で固定しました。 ピンホール板の作り方は前作のこちらをご覧下さい。 針穴の直径は0.2mmで、焦点距離が35mmですから F値は 1: 175ということになります。

ボディー前側のシャッターユニットを取り付けると当たる部分を座繰りました。 これもほぼ現物合せです。 またネジ止めの下穴もあけました。

前カバー枠とシャッターユニットを本体に仮固定しシャッターの作動を確認している所です。 ケーブルレリーズの取り付けがちょっとやりにくい以外は問題なし。

ということでシャッターユニットを完全分解してつや消し黒のスプレー塗料を塗り再組立てしましたが前述のようにシャッターセクターがスムーズに動かないので、シャッターセクター右端の浮きを押さえることで解決しました。

前カバーの前板を貼り付けました。 今回ハタ金を使うのはこれが最後でしょう。

前カバーの穴あけと一次成形を施しました。 木工ヤスリだけで気長に丹念に仕上げています。

裏蓋とフィルム圧板となる、1.5mm厚のエポキシ系プリント基板に撮影枚数確認の窓をあけました。

裏蓋内側には3mm厚のスポンジテープを貼り付けその他の部分をつや消し黒で塗りつぶしました。

フィルム圧板を所定の位置に載せて最終確認の後に蓋に貼ったスポンジテープにG17を塗ってそっと蓋を被せます。

蓋を本体に十分押し付けたらそっと外してフィルム圧板の貼り付け終了。 数時間放置し完全硬化を待ちました。

 組立て終了した2号機のステレオピンホールカメラ。 前カバーに小さなフードが付きますがそれは塗装後で、これで試写
 に入れます。

 1号機とのツーショット。 本体の高さ奥行きは全く同じで横幅が広がっています。 さあこれを何色で塗りましょうか?
 それが問題でまだ決めかねています。

早速テスト撮影しました。 これらの写真はステレオ写真になっていますが、ピンホール写真ライブラリーでご覧になれます。 左右の露出も良く揃っておりピンホールは良好な状態であることを確認できました。 勿論迷光の侵入やシャッターの不具合もありませんでした。 強いて問題といえばステレオとシングル写真をミックスして撮影すると撮影枚数がどうなっているのか判らなくなる可能性がある程度です。 6 x 6判という正方形はフレーミングに違った感覚を要求しますが、これはこれで又楽しいものです。



塗 装

このカメラを中途半端にほうっておいて3作目や4作目二手をつけるのはまずいので、いよいよ塗装しました。 当初のイメージ図にもあるように赤にしたかったのですが、単純な赤ではなく重みのある格調高い赤にしたいとあれこれ考えていました。 その結論は意外に簡単に出てしまい残り僅かとなってもう固まってしまう可能性があったワインレッドマホガニーブラウンのポアステインを3対1位で混合したものとしました。
但し色むらを避けるため水で2倍に薄め5回塗って濃くなった所が丁度良いかな? というようなしかる悠長な着色の仕方をしています。

元々薄いステインとしましたから5回塗っても塗りつぶしのような濃さにはならず、1作目よりもアガチスの木目ははっきり見えますし、アガチス独特の光の当たり具合による木目の輝きもかなり出るはずです。

着色だけで1日掛かっていますが、完全乾燥後に#400ペーパーで表面を研磨してから塗装に入りました。 塗料はウレタンつや消しニスででペイント薄め液を10%ほど加え薄くしたものを塗り5時間乾燥後2回目をそして更に5時間後に#600の空研ぎペーパーで表面をつるつるにした上で3度目を塗装しています。(これでまた1日掛かりました。)
面倒とは言え手間を掛けただけのことはある仕上がりとなりほっと一安心といったところです。

その後更に2日間完全乾燥のために寝かした上で再組み立てをしています。 残る部分はフードの部分ですが、先週1眼レフ用のピンホールレンズを作った際にフードによるケラレという失敗もやっているので、各部の採寸をもう一度やった上でケラレが起きないぎりぎり設計をしてフード製作をしようと考えています。

今回使った塗料、ステインと刷毛。 つや消しウレタンニスはここの所かなり使っている定番になりつつある優れもの。 何れもVIC's D.I.Y. mini-Shopで扱っている。

ワインレッドマホガニーブラウン3:1で混合後水で倍に薄め5回塗りした。

つや消しウレタンニス3回塗りの作業中。 ニスは10%の薄め液を加えてある。

塗装終了した前カバー左上角のアップ。 かなり良い結果だったので嬉しくなってアップの写真を数枚撮った。

こちらは前カバー右上角のアップだ。

本体左上の角だ。 右側に線が透けて見えるが、これは前カバーで隠れてしまう。

 2日乾燥させた上で再度組み立てました。 フードは低発泡塩ビ板を切り抜いて作った物を貼り付け内側を艶消し黒で塗り
 ました。 目元パッチリ?のアクセントになっていると思います。  つや消しウレタンニスは7分艶の大変シックで上品な
 感じになります!

毎度の事ながらきちんと塗装すると見栄えは格段に上がりますし一種の感動を覚えますが、それにしてもつや消しウレタンニスの質感の良さには脱帽そのもので、設計時点で赤の素敵な感じにしたいとイメージしていたものがほぼ実現しています。 

ステインの混色もこれまた楽しい作業で、面倒には違いありませんが、「ステイン着色」 → 「つや消しウレタンニス塗装」は私の木工作品の標準仕様として定着しています。


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