2005/06/03
ピンホールカメラは基本的に暗箱の1面にピンホールを取り付けその反対側の面に感光材料を置けばよいわけで、この暗箱はその名の通り光を通さないものであれば、何でも良いわけです。
印画紙を感光材料として使う場合にはそれこそ菓子箱、薄い板でできた箱、空き缶などを流用して暗箱として使えますが、自由な寸法にしたい場合やロールフィルムで巻き上げ機構を組み込むとか、フィルムバックを使う場合には箱を作らねばなりません。
厚紙で暗箱を作る
暗箱を最も簡単に作れる材料は厚紙でしょう。 厚紙とはいっても1mm以上の厚みとなると結構丈夫なものが作れます。
但し貼り合わせ部分や角の所からの光線漏れを起こしやすいのでその点の注意が必要ですが、ブローニーフィルムの裏
紙を遮光用に使うと効果的です。 (D.P.E.店で頼めば使用済みの物を無料で取り寄せてくれると思います。)
その昔中学校1年の頃だったと思いますが、私が最初に作ったピンホールカメラはボルタ判フィルムを1コマ分切り取って
フィルムホルダーに装填したもので、箱の材料はコの字型に折り畳んだものと前板がボール紙で、その他はブローニーフ
ィルムの裏紙を使ったジャバラとフィルムホルダーいう構成でした。 (左の図をクリック)
紙以外の材料はピンホールだけでしたが、1枚しか撮影できないとは言え撮影するまでは薄く折り畳んで厚さ4mm位になりますから、同じ物を複数作って何枚も撮影できるようにしてもたいしてかさばりませんでした。 ジャバラやシャッターとも言うべきピンホールを覆う部分はブローニーフィルムの裏紙で、その頃はブローニーフィルムを使う2眼レフやスプリングカメラが全盛でしたから、使用済みの裏紙の入手は極めて容易でした。
自画自賛ながらこの紙製の薄く畳めるピンホールカメラは光線漏れの問題もなく、私が自作した物の傑作のひとつではないかと思います。上の例は厚紙で作った箱ではありませんが、厚紙で箱そのものとした場合でも裏紙を使って光が漏れそうな部分を覆うことで、完璧な暗箱になります。
製作法の詳しくはこちらからご覧下さい。
薄い板を使った暗箱
私自身は暗箱を自作する場合に薄い板を使うことが多いです。 その理由としては、
・ 厚紙よりもより丈夫なものが作れること。
・ 組立て、貼り合わせに木工ボンドが使え作業性が良いこと。
・ 加工・成形が楽であること。
・ 塗装することにより長期間楽しめる美しい仕上げにできること。
などですが、ホームセンターで販売されている朴、アガティスの3-5mmの板は価格も手頃でありきちんと塗装
すると大変見栄えの良いものが作れます。
無論奮発してチーク、桂、桜、ウォールナット、ローズウッドなどが使えればそれこそ工芸品的な香りのものさ
え作れます。 安く作りたいのであれば合板という手もありますが、切り口が綺麗ではなく貼りあわせに苦労
しますしそれ程大きな板が必要になることは先ずありませんから、ムクの薄板がベストでしょう。
こういった板を貼り合わせで作る場合気になるのはやはり光線漏れでしょう。 特に板と板を直角に貼り合わせ
た部分は隙間が発生しやすいものですが、私は次のような方法で解決しています。
左の図が光線漏れを防ぐ基本構造を表しています。 先ず箱は基本的に5mmの板と3mmの板の貼り合わせ
とします。 こうすると蓋の部分が被さる部分が自動的に出来ます。
上から見たときに薄い板と厚い板が交互に貼り合わさるようにします。 こうすれば隙間があってもジグザグに
進まねばならず、容易に遮断できます。 また手前から見た断面でもこの繋ぎ目の部分に僅かな隙間があっ
ても光はジグザグに進まねばならず、内部に侵入することは先ずありません。
唯一危ない部分は蓋を被せた部分で、光は一度直角に曲がれば侵入できる可能性があります。
この場合蓋の嵌め合いの精度が高ければ問題ありませんが、水色で示したモルトプレーン等を貼り付ければ
完璧に遮光できます。
この構造の唯一の問題は箱の厚みが8mmと厚めになることと製作の面倒くささですが、苦労して作ったもの
にはより愛着が湧きますので、私は好んで使っており、6 x 9判のカメラや6 x 6判ステレオカメラではこの構造
を採用しています。
プラスチック製の箱
プラスチックで暗箱を作るのはかなり問題があります。 形によってはピンホールカメラにしてみたいプラスチック成形品も時折見かけますが、光が透けて見えるのは無論のこと、一見真っ黒で光を通さないように思えるプラスチックであっても、実は赤外線はかなり通ってしまうものが存在するからです。 これはプラスチックを着色する顔料によって決まりますので、簡単には判別が付かない厄介さがあります。 安全を見込むのであれば、ブローニーフィルムの裏紙を箱の内壁全面に貼ってしまうとか、剥がれ落ちないような黒色塗料を数回塗って完全に塗りつぶすなどをすればよいのですが、かなり手間が掛ることになるので前述の木材の方が簡単に作れると思います。
内面反射の問題
光線漏れの問題は先ず潰さねばならないテーマですが内面反射の問題もかなり重要で、充分な対策を必要と
します。 内面反射が何故問題かというと、ピンホールから入った光は感光材料に直接届いて感光させる以外に、大なり小なり暗箱の内面に当たって反射した光も感光材料に当たります。 この結果コントラストが悪くなったりひどい場合には何やらおかしな映像となって写り込んでしまうからです。 反射光が問題ですから金属製の暗箱は反射率が高いので最も注意すべきですが、その他の材料で作った場合でもこの問題は発生します。
右の写真は焦点距離28mmの35mm判ピンホールカメラで起きたおかしな映像の映りこみで、川を縦位置で撮影し下には砂利を写しているのですが、その付近一面の炎のようなもやもやがそれです。 実は太陽が画面外の左上部分にあったのでピンホールの縁に反射した光が悪さをしたのではないかと想像しているものの本当の原因は特定できていません。 しかし似たような変な写り込みは内面
反射が大きいと発生する可能性があります。
対策として考えられる簡単な方法は無光沢の黒色塗料で内面を塗ってしま
うことですが、無光沢とはいっても結構光を反射しこれだけでは不十分なこ
とが多いです。 そこで遮光壁を追加してやるのが極めて効果的で、これは
空き缶で作る場合のみならず、木製や厚紙で作る場合においても実施した
方が良い結果を生みます。
構造は左の図のようなもので、隔壁の切り口で反射して感光材料に到達し
ないよう切り口を斜めに削るか薄い材料で作れば良いでしょう。
無論これら隔壁も無光沢黒色塗料で塗ってやります。
以上簡単に暗箱を作るポイントについて述べましたが、完全な光の遮断と内面反射防止の二つが満足させられれば良いわけで、上では触れていないプラスチック板も候補に入りますが、プラスチック板の場合真っ黒で一見光を通さないようであっても、目には見えない赤外線を通してしまうこともあり、安全性を考えると上記の3種類(厚紙、木の板、金属)が暗箱を作る材料として適切だと思います。
それと遮光について不安がある場合には上記では厚紙製の暗箱で触れていますが、ブローニーフィルムの裏紙の利用は木製や空き缶の場合でも大変有効ですし、何と言っても只で手に入る材料という点がありがたいです。
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