4 x 5判ピンホールカメラ 自作カメラINDEXに戻る Home Pageへ

 2004/04/30

 構想
 ピンホールカメラは既に2台出来上がった。 何れもそれなりにこだわりを持ったものとして作ったつもりであり、大変良く写っ
 てくれる。 しかしピンホールカメラの宿命としての像の甘さというか均等にボケている像は如何ともしがたい。
 これを更に改善したいのだが、その方法としては唯一撮影画面の拡大しかない。

 光の回折現象を無視してしまうと例えば直径0.2mmのピンホールで撮影したときにフィルム面上で0.2mm以上を解像でき
 ないことになる。 写真で言う解像度で表現すると1mm辺り5本の解像度ということだ。

 優れたレンズであれば1mm辺り100本以上を解像できるのは当たり前だからこ差は極めて大きい。  但し画面を大きくす
 ることによりこの問題はかなり軽減できる。 例えば1作目は6x9判の画面サイズだったが35mm判の画面に対して約2.3
 大きい(面積比では5.4倍) そうすると1mm辺り5本しか解像出来なくても拡大率を小さく出来るから、35mm判で解像度100本との比較でもそれを6x9判と同じサイズに伸ばした時の差は5本対100本から5本対43本と小さくなる。

同様に更に大きな画面を使えばもっと有利になる。 縦横比が35mm判とは違うがプロが使用する4x5判の画面サイズは、86mm x 120mmもある。 面積比で35mm判の12倍近くもあるので、同面積に35mm判を引き伸ばした時の解像度の差は5本対100本から5本対29本になるわけだ。  言い換えると35mm判で写したピンホール写真より3倍以上もシャープに見えるはずだ。 従ってより大画面で撮影したピンホールカメラに対する興味は非常に大きい。

 ところで4x5判のフィルムはシートフィルムと言って1枚1枚が切り離されており、
 ロールフィルムのように連続して撮影できず、専用のフィルムホルダーに装填して撮
 影する。 これはフィルムホルダーを購入しなければならないことを意味し、これが大
 変高いこととフィルムを装填するには完全な暗黒下でないとなrないとかの厄介なこ
 とはあるが、カメラ本体の構造は極めて簡単になってしまうメリットがある。

 ということで3作目として4x5版のピンホールカメラ製作にチャレンジしようと考えフィ
 ルムホルダーを購入した。

 4x5判の世界では標準品として知られているとのことで、米国リスコ社のフィルム
 ホルダーを購入したのだがより安全性を高める機構のせいで、当初考えていたより
 複雑な機構を作らねばならないことになりそうだが、それでもロールフィルムの巻き
 上げ機構やフィルムガイドレール、撮影枚数確認窓などのことを考えずにすむので
 楽である。

 (左はリスコ社の4x5判シートフィルムホルダー)



 ボディーは大きくなるわけだが中はがらんどうであり、これまでのように5mm厚程度の板で作ると大きさの割には
 重量が軽すぎて却って不安定になると考え12mm厚のシナ合板を主材料として使うことにしている。
 (何しろ何しろ連続した日曜大工で出来た端材が沢山あるのでその処理方法のひとつだ。)

 外観の感じは恐らく1升マスにあれこれ部品を取り付けたものになると思われる。
 デリケートな加工を要するのはフィルムホルダーを挿し込む部分で、光が漏れないような構造と精度の高い組立
 てが必要なのと、フィルムホルダーの遮光の蓋(撮影時にはこれを引き抜かねばならない。)のロック機構のボタ
 ンをどうやって押すか?(上の写真の矢印の先に見える白い丸ボタン)が問題である。

 ファインダーは前作と同様折畳式スポーツファインダーとし、シャッターも前作にて
 採用したものと同じ構造でケーブルレリーズ併用とする予定だ。


 以上の構想をまとめた外観のイメージは上の図のようなものだがあくまで趣味の
 世界のテーマであるので、日曜大工の合間を見ながら製作に着手したいと考えている。 従っていつ開始するかが全く不明である。



2006/04/21

構想変更

構想変更というと聞こえがよいのですが、何と2年も構想のままほったらかしていた訳で計画性がないと言われても仕方がありません。 言い訳めくのですが購入したリスコ製の4x5ホルダーには引き蓋を不用意に抜かないためのロックがあるため、カラクリを考えなければならず、思考実験だけで右往左往しているうちに本業の日曜大工が忙しいために忘れ去られていました。

 ところが別な製作テーマで欲張った4 x 5を夏までに作りたいとまたまた花火を上げてみたものの、いきなり
 それに手をつける前に検証しないとならないことが幾つかあり、もっと簡単な物でそれらの検証もやっておきたいと
 考え構想を練り直した次第です。

 その検証の第一は35mm判で使った焦点距離19mmのピンホールレンズで、これは0.02mm厚のステンレス箔
 を使ったため周辺光量の低下が少なくなっています。  同じステンレスを箔を使って4 x 5判で焦点距離35mm
 の超広角としたときに周辺光量低下がどの程度になるのかを確認しておきたいと考えています。 これはあおりを
 使ったときの周辺光量がどうなるかを推測したいためです。  これがあまりにもひどければあおりの導入をあきら
 めねばならない可能性も出てきます。 
 4 x 5判の35mmの焦点距離は対角線を基準として考えたときに35mm判では10mmという魚眼レンズクラスの
 超短焦点になります。 通常の写真レンズでも周辺光量低下が大変目立ちますから、光学的に何も出来ないピン
 ホールレンズではかなり厳しいはずです。

 検証の第二はシャッターにタイマーと連動する機構を
 組み込みたいということです。
私はうっかりものでシャッターを開けている際に腕時計を見ていてもどこから秒針をスタートさせたかを忘れてしまい、とんでもない露出時間とすることが時々あります。 
この意味で長時間露出を予めセットできる1眼レフ使用の際の便利さはこの上ありません。 但しだからといって電子シャッターを自作するのはちと荷が重いので、次善の策としてシャッターの動きとタイマーのON/OFFを連動させれば使いやすくなると考えています。

ここで使うタイマーはキッチンタイマーと言われており秒と分を任意にセットできるもので、ストップウオッチ的な使い方も出来ます。(右は百円ショップで見つけた物) 
スタートスイッチを押すと設定時間から減算されてセロになるとピピーッ ピピーッと
ブザーが鳴り、もう一度スターとスイッチを押せばブザーが停止してタイマーは停止しリセットボタンを押さない限り最初に設定したタイマー作動時間は記憶されたままに
なります。

このタイマーのスタートスイッチの接点にワイヤーを半田付けして引き出し、シャッターが開くときと閉じるときにONとなるスイッチに並列 接続すれば、シャッターが開いたときにタイマーがスタートしピピーッとなったらシャッターを閉じればタイマーも停止することになります。

またストップウオッチ的な使い方でもシャッターが開くとスタート、シャッターを閉じればストップしその間の露出時間は手許で読み取りが可能です。  タイマーそのものを組み込むスペースはないでしょうから、先ほど申し上げたようにスタート/ストップスイッチの接点からワイヤー2本を引き出しカメラ本体にジャックで接続するようにすれば、改造したひとつのタイマーを複数のカメラで使えるようになります。

問題はシャッターに組み込むスイッチで、シャッターセクターが開くときに作動するスイッチは極僅かな力で作動しないとならず、想像ですがかなりのデリケートさを要求すると思います。 この機構を試作して検証しておきたいと考えています。

第三はキャップ式のスポーツファインダーです。 上記構想図面を見るとみょうちきりんなファインダーが描かれています。 実は使用しないときにはカメラ前部に被せて収納しようと考えているのですが、オープンフレームタイプと比べて使いやすさがどうか未知数な面があります。 オープンフレームの場合撮影視野以外も見渡せるのですが、キャップ式だと撮影視野内しか見えなくなります。  その昔2眼レフではこのタイプのスポーツファインダーが殆どでしたが、両目をあけて覗けば片目で撮影視野外を見ることが出来ました。 しかしここで描いた物は大きいので多分撮影視野外の半分程度しか見えないと思います。 どうしてもというのであれば、アクリル板でこのキャップ式ファインダーを作ることも考えられますが、取り敢えずは薄板で作って実験したいと考えています。

第四はフィルムホルダーの装填方法で、メーカー製の4 x 5判カメラのフィルムホルダー装填は挿し込み式が殆どですが、この場合自作ですと遮光と装填のスムーズさが両立しにくい可能性があります。 そこで裏蓋を開いて落とし込む方式を試したいと考えています。 構想図ではその様子を描ききれていませんが、製作段階でご紹介します。

間もなくゴールデンウィークに入りますが、この間に写真が撮れるまでの仕上げられたらいいなあー!と考えているのですが、さあどうなることやら。

キャップ式ファインダーの内側に、As Time Goes By とあるが、これはお遊びだ! 私の好きな名画「カサブランカ」のテーマ曲名で日本語では「時の流れのままに」と訳されているが、ピンホール写真に相応しい表現に思えるのだが?!



2006/05/12

製作開始

てんこ盛り版4 x 5判カメラの前に各アイデアの検証版を製作開始しましたが「君子豹変!」、前回の構想より更に簡単なというか箱そのもののような物に再び変更しました。 そうした理由は幾つかありますが、シャッターの周りにLED点滅回路を組みこむ充分なスペースを取りたかったこと、ファインダーについての卓抜なアイデアが浮かんだこと、手持ちの合板端材で作りたかったこと、その為には曲面はあきらめざるを得なかったこと、そして一番大きな理由は早く完成できること!が挙げられます。

検証項目としてはフィルムホルダーの固定方法LED点滅回路の実装シャッターとキッチンタイマーの連動新型ファインダーのテストが挙げられます。  こう書くと何か一時凌ぎのカメラを作るような気がするかもしれませんが、私自身はひとつのスタイルとしてあり得る物として捕らえておりますから簡易型=手抜きの塊みたいな図式は考えていません。  その辺りは完成時にご理解願えると思いますが、長く私のピンホールカメララインの仲間入りになるものとして作るつもりです。

 左が外観イメージで、あれっ ファインダーがない!と思われるかもしれませんが、それについては後日詳しく
 紹介する予定です。  使用する材料は3mm厚のラワン合板を内側の層に、4mm厚のシナ合板を外側の層に
 使い貼り合わせ後の厚みを7mmとしています(ごく一部に5.5mmシナ合板を使用)ので、充分な強度をとりなが
 ら外側をニス仕上げとすることでシンプルながらチープではない外観となるはずです。
 (目が粗くて美しくないラワンの木目を外側に出しません。)

 右が真上と真横から見た断面図で寸法もこれらに従います。
加工・接合の精度はフィルムホルダー周りは0.2mm以下を必要としますが、他は設計値を守るよりも現物
合わせで内側から外側へ組み立てて行けば良いので、作業工数は多いですが製作難易度は高くありません。  構造的な特徴としては2層構造としそれらが互い違いに組み合わされるので接合部に多少隙間があっても完全な遮光が出来ることと、組みあがってからでも内部の各部に手が届くので後で変更や改善の作業がしやすい点が挙げられます。  また今回採用するようなフィルムホルダーの固定方法は見かけた記憶がありませんが、引き蓋(遮光板)が渋くて下手をするとフィルムホルダー全体を抜いてしまうようなことが全くなく、合理的な構造だと自負しています。  (各部材の寸法図はこちらですが、実際の寸法は現物合わせで簿調整する場合もあります。)

寸法図を見ただけでは構造が判りにくいと思いますが、図中の部材記号を以下にお見せする写真にも入れておきますので、照らし合わせることにより理解しやすくなると思います。

組立て開始。 12mm厚の合板をロの字型に切り抜いたDFE'を接着します。 Dの寸法精度と切断面の直角度は非常に大事です。

フィルムホルダーはこのような位置にガタや余計な隙間無しで収まります。

構造上大事な所。 矢印の先には幅2.5mm、深さ1.5mmの溝をナイフで削りだしてあります。

その溝にはフィルムホルダーにある線状の突起部分(矢印)が嵌り込む仕掛けで、これでフィルムホルダーは動かなくなります。

更にG2枚を貼り付けました。 念のために申し上げますが、全ての接着において、接着剤硬化まではクランプやハタ金で圧着保持しないと駄目です。

この状態で再度フィルムホルダーを嵌め込みました。 ガタがなく黄色矢印部分が空色矢印の面より僅かに上に出ていればOKです。

第2層(外側の板)を貼り付けます。 先ずE'の上にEを貼ります。

反対側にはC'を貼り付けます。

次に三脚固定の台座を作りました。 5mm厚アルミ板を30x 50mmに切断しその中央にW1/4の雌ネジを切っています。

愛用の旧型スリックバル自由雲台にネジ込みました。 台座の対角線が少しはみ出る丁度良い大きさです。

その台座に合わせて穴をあけたB'を底に貼り付けました。 アルミ台座は塗装が終わってからエポキシ接着剤で固定します。

そして上側のB'を貼り付けます。 こちらは穴無しです。

余談ですが三脚固定用台座の中心は正面から見て右端から60mmの所にオフセットして取り付けています。  これは縦位置撮影した際に(右側の写真)カメラボディーが三脚に当ってしまうのを防ぐためです。

後は前板2枚の貼り付けとフィルムホルダーのカバー部分を組み立てればボディーは完成となります。



2006/05/19

製作 2

残る前後の板を貼り合わせてカメラ本体部分は完成しました。 一見面倒なようですが外層の板は設計値よりも1mm程大きめに切断し、現物合わせでドンピシャ寸法となるよう替刃式ヤスリで削っています。 板厚が薄いですから想像よりも遥かに短時間に出来ますし隙間の全くない物が作れます。

接合部の段差は中目ヤスリで極僅かの段差まで削り込んでおきます。 後ほど塗装前に#400ペーパーで磨き上げますが、それまでの間に汚れると具合が悪いためです。

裏側の蓋の組立てです。 Aの内側には幅2.5mm、深さ1.5mmの溝を掘り込みます。 フィルムホルダーの線状突起がここに嵌りこみます。

裏蓋は左の状態からひっくり返すとこのようにフィルムホルダーをすっぽり包んで被さります。

一方前側のカバー(第一層)を落とし込んで接着します。 周りに段差が見えますが接着剤硬化後削って平らにします。

前側のカバー(第二層)を接着します。

裏側のカバー(第二層)も同様に貼り付けてカメラ本体が組みあがります。

裏蓋開閉構造の説明。 実際には手で押さえている側に蝶番をつけますが、裏蓋を開いたときはこのようになります。 フィルムホルダーをこの状態で出し入れします。

裏蓋を閉じた状態。 フィルムホルダーは上下の線状突起が溝に嵌り込むため、引き蓋を引いてもホルダー本体が抜け出てくることはありませんし、光線漏れもありません。

これでピンホールを貼り付ければもう撮影が可能な状態ですが、シャッター、LED点滅回路、ファインダーの製作を終了し塗装が済むまでおあずけです。


次にカメラ本体に搭載するLED点滅回路、キッチンタイマー改造の露出時間表示器、ファインダー、そしてシャッターの最終設計に取り掛かりました。

 LED点滅回路は自己点滅型LEDを使おうと考えたのですが、動作電圧が5Vということで、トランジスター2本、抵
 抗1本、コンデンサー1本で作れる左の図のようなものとしました。 電源は単4乾電池2本の3Vですが、手持ちの
 古いアルカリ乾電池(容量が不明?)で連続動作テストをしたところ、5時間経っても点滅間隔が変化することはな
 いくらい低消費電力なので(電圧が下がると点滅間隔が変化する!)、電池スペースが問題になる場合は小型の
 リチウム電池の採用もあると思います。  この機構は完全に遊びの領域ですが、最終的には赤の高輝度LED
 前面または上面に取り付けますので、人物撮影の際にシャッターが開いていることが判り便利でしょうし、
 撮影時にカメラの前を通過されることの防止にもなる? かもしれません。

露出時間表示器については百円ショップで買ったものが、電池_交換の為にネジを緩めてやらないとならないという面倒なこともあり結局使わず新たに購入ました。 単4 1本で作動しさすがに百円では買えませんでしたが\750.-で、安いにしてはデザインもよくなかなかのものです。  これを分解してSTART/STOPスイッチの両接点に細いワイヤーを半田付けしてケースに穴をあけ外部に引き出し、ワイヤーの反対側にはDCアダプター用の最も細いプラグに接続しています。  ジャックの方はカメラのボディーに固定してやりますが、光線漏れもなく好都合でした。  同じタイマーを購入できる機会は少ないと思われますので、製作詳細は載せておりませんが、START/STOPスイッチに並列にワイヤーを接続して取り出せばよいだけですので、他のタイマーでも実現容易だと思います。

次はファインダーです。 構想図にはファインダーが描かれていませんが、デジカメ・ビデオカメラ用0.5倍のワイドコンバーター(実売約\7,500.-)をファインダーとして使います。 これを後から覗くと円形に広角度の視野が見えます。 厳密に調べた結果ではないのですが、私が現在持っている最も広角なフォクトレンダーの15mmファインダーよりも広範囲が見えますので、35mm判の焦点距離で12-13mm程度までのファインダーとして使えます。  価格が手頃なのにも拘わらず大変見え味も良いです。 そして購入時には気が付かなかったのですが前群と後群が簡単に外れしかもその外す途中でよりシャープに見えるようなので、ここに固定用の厚いアルミ板を挟んでしまえば、最もシャープに見えるようになり且つアクセサリーシューに固定するのが容易になると思われます。

このファインダーはこのカメラを作るのに購入した最も高価ですが、メーカー製のファインダーを購入するとなると3倍以上の価格となりしかも視野調整の自由度がありませんので好都合な部材だと思います。 視野のマスクを数種類自作して交換すれば複数のカメラと共用できる点もありがたいです。 但し大きさと重量がありますので、大型のカメラ(4x5判以上?)向きかもしれません。

 今週最後にお伝えできるのはシャッターの最終設計です。 カメラに仕組むカラクリ部分が一応決まりましたので
 左のように設計図を描き上げました。  こう書くと数10文字で終わりなのですが、シャッターの構造、大きさ、キッ
 チンタイマーを制御するスイッチ、LED点滅機構との連動など色んな矛盾が発生しやすいポイントが幾つかありま
 すので、ここでお見せできる構造や寸法がまとまるまでに2日近くを費やしています。

 ピンホールカメラ用のシャッター製作はこれが3作目になりますが、削りださねばならない金属板は3枚ですから
 私が最初に作った6x9判用のシャッターに比べれば製作難易度は月とスッポンの差です。  ピンク色で示した
 シャッターセクターは0.3-0.4mm厚の真鍮板、空色で示したレリーズレバーは1.5mm厚のアルミ板、そして
 シャッター基板は0.8mm厚の真鍮板を使う予定です。

シャッターを開くには右上横に配したの真鍮丸棒を押すことによってなされますが、この真鍮棒を市販のシャッターレリーズで押すことになります。 ストロークは3.5mm程にしようとしていますが、シャッターが開くには3mm弱のストロークで作動するはずです。 シャッターセクターはそれに取り付けられた小さなコイルバネ(引きバネ)で引っ張られて図の位置に停止していますが、レリーズレバーが押されるとその先端が下がり、先端に取り付けられたコイルバネの位置が変化しあるところまで移動すると左回りの回転力が与えられ下の図の位置で停止します。

この間右下に配されている薄い板バネ(スイッチ)をシャッターセクターの突起が弾きますが、シャッターがあく直前でこの瞬間にキッチンタイマーがスタートします。 更にシャッターセクターの突起は図で赤丸で描いてあるストッパーで止まりますが、これがもうひとつのスイッチでシャッターが開いている間は導通となりこの間LED点滅機構が作動します。

シャッターレリーズレバーを押すのをやめるとシャッターセクターは元の位置に戻りますが、シャッターが閉じた直後に右下の板バネを再び弾きます。 このときにキッチンタイマーが停止し、LED点滅回路も停止します。   これらの動作にはタイムラグがありますが、数秒以上の露出時間を基準とするピンホールカメラでは問題になる量ではありません。  全てを描きこむとごちゃごちゃして判らなくなるためにこの図ではかなり省いていますが、単なるシャッターではなく2つのスイッチを組み込んだこれまでよりは複雑な動作になります。

改造したキッチンタイマー。 右端のSTART/STOPと書いてあるスイッチの接点にワイヤーを半田付けし左側から引き出しその先にDCアダプター用の最も細いプラグを接続しました。 右下がジャックでこれをカメラ本体に固定します。

こちらはLED点滅の実験回路。 点灯時間は消灯時間の1/3程度ですので、平均して流れる電流は5-7mA位と想像しています。  回路そのものは1円玉サイズに十分入るのでより小型の電池でスペースを減らす手もあるでしょう。 

いろいろ物色した中で購入したワイドコンバーター。  倍率が0.5倍で購入価格は約\7,500.-でした。  このクラスでは最も安いと思われますがメーカー製ファインダーに比べ格安で、見え味が良く大変広視界です。

左が私が愛用しているフォクトレンダー製の15mmファインダー。 単品売りはされていませんが多分\20,000以上の販売価格になるでしょう。 そうするとこのワイコンは大きくて重いものの約1/3の価格です。

カメラに取り付けるこちら側から覗くわけですが、レンズ径が大きいので大変覗き易くしかも眼鏡を掛けたままで全視野が見渡せます。 目玉をぐるぐる回す必要もありません。

そしてこのコンバーターは簡単に前後のレンズが分解できます。 前玉は短焦点の大きな凹レンズ、後は凸レンズですから逆ガリレオ式望遠鏡の構造です。

通常の状態で真横から見るとこうなっています。 後ろ側のレンズ枠にはMACROと書いてありますが、後ろ側だけを使うと接写用として使えるという構造になっています。

後群はネジの噛み合いが充分である範囲でなんと5mmも緩められます。 しかも緩めた方がシャープに見えるのでここに3-4mm程度のアルミ板に穴をあけて挟み込めば、アクセサリーシューに簡単に固定できるようになります。

一工夫を要するのは視界のマスクです。 完全な円形視界ですから撮影画角に合わせたマスクを取り付けたいのですが、簡単にやるにはレンズキャップに穴をあけてしまえばよいでしょう。

これは前面のクローズアップですが、前のレンズ固定のリングにマスクを貼り付ける手も考えられます。 但しレンズが僅かに前方に突出しているので傷をつけてしまう心配があります。

おあつらえ向きのパーツを発見! ホットシューからストロボ接続用の接点を取り出すアダプターですが、上のアクセサリーシューはネジ2本を緩めれば外れます。 そしてシューの部分はカメラ本体に、下の部分はコンバーター支えのアルミ板に固定すれば良いという魂胆です。

左のストロボ接点取り出しのアダプターを使ったファインダー完成時の想像図。 図中空色のL字型の部分が加工が厄介そうな3mm厚アルミ板ですが、ここさえうまく作ればワイドコンバーターそのものは全く改造することなくファインダーが実現します。



2006/06/09

製作 3

シャッターの製作を進めましたが、従来の延長線というかシャッターメカニズムそのものは期待以上に快適な動作をし、これまでに作ったシャッターのようなトラブルは全くなく順調に推移しました。 ところが今回追加した電気回路の部分で大トラブルでなんとトラブル解決の糸口を掴むまでに8日間も試行錯誤を繰り返すという始末でした。 改めて動作状況が目に見えない電気回路の難しさを実感しています。

そのトラブルとはキッチンタイマーのON/OFFをシャッターに連動させる部分です。 何しろ単純なスイッチを設ければ良いはずなので、シャッターのセクターをスイッチの接点の片方としそれが回転する際に相手の接点と接触すれば良い!筈だったのですが、どうもON動作が大変不安定でした。 接触不良ではとあれこれいじり回したものの全く駄目で、最後にはマウスに入っている超小型のマイクロスイッチを外して使いましたがこれも駄目です。 接点を流れる電流は極僅かなので接触抵抗が問題でもなさそうです。

そうこうしているうちにタイマーから引き出されたワイヤーの先端同士の接触でも動作しないことが判りその原因はON時間が短すぎたことらしいぞ?と気づくまでに8日間を費やしたわけです。 そこでシャッターセクターの周囲が回転しながらより長く接点に接触するよう改造しましたがそれでは不十分で、結局解決策として電気的な方法で実質的なON時間の延長を更に図りON/OFFの誤動作が100回近く試して4度だけ(改善する前は誤動作率が60%を越えていた!)発生するという状態にどうにかなりました。 未だ完璧とは言えませんが、チューニングを追い込めば誤動作率ほぼゼロになるだろうと予測しています。

もうすぐ完成する予定のシャッター。 純然たるメカニズムの部分は完璧な安定した動作をするのですが?

左下のアップ。 ベーク板と燐青銅板をエポキシ接着剤で組み立てたスイッチで、シャッターが開いたときにここに当って停止し点滅LEDのON/OFFをします。

こちらは散々トラブッたキッチンタイマーON/OFFのスイッチで、マウスの中のマイクロスイッチを流用しています。 矢印先の灰色部分が引っ込むとONになります。

別な角度から見た同じ部分。 ON時間を少しでも長くしようとご覧のように弓上の接触バーを取り付けてみましたが、これだけでは効果不十分でした。


 左の写真をクリックするとシャッターとキッチンタイマーと
 の連動状態のデモが音声付動画でご覧になれます。

 デモにてタイマーは5秒にセットしていますが、実際には
 自由に変更可能です。 シャッター開と共ににタイマーが
 減算を始め0になるとピピピーと露出終了のブザーが鳴
 り、シャッター閉でタイマーはリセットされて元の状態に
 戻ります。 この動作を2回繰り返します。 フレームレート
 の関係で動きがギクシャクして見えますが実際にはその
 ようなことはありません。 またストップウオッチ的な使い
 方も可能で、多重露出時には露出時間累計の値を知る
 ことが出来便利です。

 この動画をご覧になるにはウィンドウズ メディア プレー
 ヤー
が必要です。
 
電気的なソリューションを加えて誤動作率が大幅に低下しました。 更にチューニングすれば完璧になると予測しています。

 



2006/06/16

製作 4

その後キッチンタイマー連動スイッチの安定動作を更に図るべく実験を続けたのですが、期待に反して1%程度の頻度で発生する誤動作は改善できませんでした。 正確に言うと追加した遅延回路を強化すれば改善するのですが、副作用としてタイマーのリセットが出来なくなってしまいます。 そこで遅延回路に依存する前に電気的な接触期間を少しでも長くするべく抜本的なシャッターの設計変更をすることにしました。 追加機構がなければ全く問題ないので折角作ったシャッターはそのまま残し追加機能無しの素うどん仕様で別なカメラに使うことにします。   抜本的設計変更は電気的な接触時間を長くすることによりシャッター本来の確実でスムーズな動作を損なう可能性があり完全に白紙からやり直しになります。 この作業は気が滅入りそうになるため気分転換のためにLED点滅回路を最終実用回路にする作業やファインダーの製作に手をつけました。

 基本的な回路は既にお知らせしたとおりですが、実際の使用に当たってはLEDの点滅間隔が1秒
 になってくれるとLEDの点滅を見ているだけで露出時間が判り便利です。 但しトランジスター2本
 と抵抗、コンデンサーだけで出来てしまうこの簡単な回路では電源電圧の変化や温度変化で点滅
 間隔は変動してしまいますので正確さは期待できませんがそれでも目安としては使えますから、
 点滅間隔の微調整が出来るよう抵抗は固定抵抗と半固定抵抗の組み合わせとしました。
 (裏蓋を開けばマイナスドライバーで調整ができます。)

使用するLEDは最終的に赤の高輝度LEDとしています。 若干高価ですが青のLEDを使おうかとも考えたのですが、動作電圧が高くてこの回路では使用できません。 高輝度だけに正面から見るとまぶしすぎの感じがしますが、なんらかの光拡散の工夫をして前後から見えるようにしたいと考えています。 組み立てた基板はもっとも小さな物でそこに単4 2本用の電池ホルダーを両面接着テープで貼り付け、空いた右側に回路を組み込んでいます。 この基板はカメラ本体に3本のネジで固定します。
以前にも触れたように単に点滅させるだけでしたら余計な回路を作らずとも点滅LEDが入手可能ですが、動作電圧に5Vが必要なことと点滅間隔の変更が不可能ですのでこの回路のメリットがあります。


 点滅間隔は電源電圧3V付近では約1秒になります。
 これより電圧が高いと点滅間隔は長く電圧が低いと点滅
 間隔は短くなり約2.5Vまで下がると点滅せず点灯しっぱ
 なしになりますので、電池交換の時期が判ります。

 写真に見えるマイクロスイッチはマウスから外した物です
 が最終的にはシャッター基板に固定されます。 高輝度
 LEDも裸のままですが、光拡散を施してカメラの前後から
 見えるようにしたいと考えています。

 尚左の写真をクリックすると別ウィンドウが開きLED点滅
 の様子をご覧になれます。 スイッチのON/OFFは手動で
 行っています。

 この動画を見るにはWindows Media Playerが必要です。
完成したLED点滅機構の基板。 点滅間隔の微調整が出来るよう半固定抵抗を追加しました。

 

ファインダーの製作

次にファインダーをやっつけてしまおうということで、3mmのアルミの平板を電動ジグソーで大きめに切断しL型の曲げ部分をバイスと重量級の玄翁を使って曲げた後に寸法図どおりにヤスリを使い削り出しました。 以下にお見せする写真を見ると短時間にできそうですが、各部の寸法を0.5mm以内に収めようとしたため寸法を確認しながらヤスリで削って行くというやりかたで、特に真中の抜き穴は3mmのドリルで切断する円の内側に数十個の穴をあけ隣どおしの繋がり部分を切断しヤスリで成形という手間の塊の作業となっています。 このためたったこれだけの物に1日半を費やしました。

その結果は期待以上の出来栄えで、強度や恰好よさ?見え味何れも苦労した甲斐があったと思います。 但し先にも触れたように大変巨大なファインダーですのでバランス的には賛否があるかもしれませんが、実用性は大変優秀です。

ファインダーとなるワイドコンバーターを固定する枠の最終的な加工寸法図です。 材料は3mm厚アルミ板。

電動ジグソーで大まかに切断後L字型の曲げと寸法図どおりにヤスリで削りだす器用とか腕よりも根気と気力のほうが重要という加工でした。

先に説明したシューのストロボ接点からストロボに接続するアダプターを分解し台の部分(真中の黒の塊)を製作した枠に固定します。 右端のシューはカメラ本体に取り付けます。

ファインダー枠とその台座が組み上がり、ワイドコンバーターの前後のレンズを外しそれらで枠を挟んでやれば完成です。

完成したファインダーを一番のお気に入りの6 x 9判カメラに取り付けました。 「潜望鏡」とか「片目のでんでん虫」とかいろいろ言われそうですが、これの実用性はたいした物で、大変明るくしかも眼鏡を掛けたままで全視野が見えるという優れものです。 \7,500.- + 根気は安い投資です。

台座がもう少し低い方が恰好よさそうにそして安定感も増しそうですが、大変視野が広角なのでこれ以上低いとカメラのボディーで視野がケラレます。

今回作った部分は後から見ても違和感はありません。 後のレンズの口径が大きいのとハイアイになっているので、眼鏡を掛けたままで全視野が見えます。

シャッターの再設計

 最終的なLED点滅回路、ファインダーを製作している間シャッターはどうなったかというと、構造的に違う物を4種
 類ほど描き上げて思考実験をやった上でこれなら問題なく行けそうだという物を選びました。
 左の図がそれですが、次のような基本寸法部分が変わっています。

 かなりの変更を加えていますが、スイッチを作動するのに必要なトルクの軽減と同じバネを使ってより大きな回転
 力を出すために効果的と思われることを全て盛り込みました。 その結果としてよりスムーズで安定した動作が軽
 いタッチで実現できることを狙っています。

   1.セクターの回転角度  40度 → 60度  回転速度が同じならばスイッチONの時間は理論的に50%増大します。
   2.セクターの回転軸からスイッチ接触点の距離 25mm20mm 接触部分のトルクが25%アップし摩擦に対して強くなる。
   3.セクター回転のバネ中心からの取り付け位置 25mm30mm 同じバネで回転トルクが20%アップする。
   4.マイクロスイッチにアクチュエーター追加 スイッチの動作トルクが半分以下に下がりより軽やかに作動する。


以上はあくまでも理論的な値ですから他のファクターで必ずしもその通りにならないかもしれませんが、トータル的によりスムーズに作動する方向になることにより、かなりの改善結果を期待出来ると想像しています。  特にシャッターボタンのストロークは5mmとしていますが、実際にはもっと短く3mm程度になる可能性が大で、そうなった場合にはストロークを5mmに押さえながらより軽くする方向に調整します。



2006/08/25

シャッターの再見直しと本体組立て続行

 キッチンタイマーを正しく作動させるためにはスイッチがある程度ON時間
 を持続しないとならず、それを純機械的に解決しようというのがシャッター
 の再設計の目的だったのですが、今回はこれで良いとしても今後小型の
 (例えば35mm判用)シャッターを作るのは大変難しくなりますので、もう
 一度考え直し汎用性の高い解決策を再検討しました。

 その結果の答えは電子回路の併用にあります。 スイッチがチョーンと
 マイクロセカンドレベルのONしかしなくても電子回路でONの時間を持続
 させられればよいわけです。 但しLED点滅回路に使う3Vの電源を流用
 することを前提とします。 

 回路を複雑にすれば作るのが面倒なだけでなく設置場所の問題がでて
 きますので、最終的には左の図のようにトランジスター、抵抗、コンデン
 サー、ダイオード各1本とリレーという簡単な物になりました。
 使用するリレーは3Vで動作電流が17mA程度しか流れない松下電工製
 のマイクロリレーですが、特殊な物ですのでまだ入手できていません。

 リレーの替わりに
 抵抗を入れて実験
 した所では、SWを
 ほんの1瞬ONとし
 ただけでリレーの
 ONはかなり長くな
 ります。
 その時間はコンデ
 ンサーの容量で決
 まります。

ONの持続時間は1/4から1/8秒程度でよいと思われますが、リレーが入手できてからコンデ
ンサーの値を決めることにします。 またこの回路は右のように30 x 30mmの穴あき基板に
組み込んで、LED点滅回路と並べて組み込みます。 LED点滅回路と一緒にして本気で小さ
くしようと考えたら電池を除いて4 x 3cm位にまとめることが出来るでしょうし電池にボタン電
池を使えば、35mm版のカメラ用に作ることも可能だとも考えています。

最大の消費電流は17mA程度ありますがそれはリレーが作動する1/4-1/8秒の間だけで、
通常は殆ど電流は流れません。 従ってLED点滅回路の電源(単4電池2本)と共用しても
電池の寿命は相当長いものと想像されます。  同じ事をメカニカルで実現しようとしたら
アマチュアの工作では安定性に不安が残りますので、かなり余計な時間を費やしましたが、完成度の高い解決策だと考えています。


本体への部材仮組み込み

さんざん迷い随分と時間を潰しましたが、やっと最終構造が固まりましたので本体に組み込む部材を取り付けました。 シャッターはスイッチとして最も小型のマイクロスイッチを2個取り付けて調整した上でばらし黒色艶なしペイントで塗装し組み立てました。 シャッターレリーズを取り付ける部分はM4のナットでこれを本体内側から埋め込みエポキシ接着剤で固定しています。

この部分とシャッターレリーズレバーとの間は直径2mmの真鍮棒でリンクされますが、シャッターレリーズの芯棒が当る部分は皿上になるよう1mm厚の真鍮板を半田付けしています。 そして2.7mmの合板を貼りあわせたリンク棒の支えでリンク棒の位置決めをしますが、リンク棒の支えは後で集成が効くように接着はしていません。 またシャッターレリーズを捻じ込まないときには外光の漏れがありますので、これらの部分全体を遮光紙で覆うという工夫が必要になります。

こうした後シャッターとシャッターレリーズを取り付けて作動させましたが、若干重いこととストロークが設計値より大きめ(3mm位)でしたが、快調に作動しカチャーンという独特の作動音で動作状況が良くわかるようになっています。

その他LEDとキッチンタイマーの接続ジャックの埋め込み、LED点滅回路の組み込みが終わり、塗装前の予備加工は全て終わりました。 来週は本体の塗装を済ませる予定です。

シャッターはばらして艶消し黒で塗装後再組立てし、超小型マイクロスイッチ2個も組み込みました。

本体左側の追加加工。 上からLED、シャッターレリーズ捻じ込み穴、キッチンタイマー接続のジャックです。

2.7mmの合板3枚を貼りあわせたリンク棒ホルダー。 リンク棒は2φの真鍮棒で片方は1mm厚の真鍮板を円盤状に切り半田付けしてあります。 その反対側はつるつるに丸めてあります。

上はレリーズ固定側で下はシャッター側。 リンク棒の入る穴はシャッター側が横長になっています。 これはシャッターレリーズレバーに当る部分が約 1mm上下するためです。

リンク棒ホルダー挟んで固定する別なブロックを貼り付けました。 中央に外側からレリーズを捻じ込むM4のナットが見えますが、エポキシで接着しています。

リンク棒ホルダーを嵌め込みました。 リンク棒の皿上の側がM4ナットを覆っていますが、この部分からの光漏れがかなりあるので後ほど遮光紙で覆います。

リンク棒ホルダーに抑え板をネジ止めしシャッターも取り付けました。 レリーズとの間のリンク機構のガタは全くありません。下左に見えるのがLED点滅回路基板でその右側の空いた所にキッチンタイマー用ON遅延回路が後ほど追加されます。 以上で本体への組み込みは無事終了しましたので、再度ばらして本体の塗装に進みます。





2007/04/20

なにをいまさら??

と言われてもおかしくないくらい製作途上で放りっぱなしにしていましたが、JPPS(日本針穴写真協会)からWPPD(World Pinhole Photograph Day)に応募する撮影会がみなとみらいで開催される!という案内が入ってきて、こりゃなんとかせにゃならん!!と、残る作業を急遽手掛けて完成させました。

言い訳がましいのですが、1)キッチンタイマーをコントロールするスイッチの作動にちょっとした変化でまだ不安定さ残っていること、2)点滅LEDのON/OFFスイッチも百回に一度程度の頻度で誤動作(スイッチが入らない)などの問題がその後出てきて解決策を模索していました。  また3)裏ブタを開閉するための蝶番に適当な物がなかなか見つからなかったこと、4)裏ブタのロック装置をどうするかも適当な部材が見つからずこれまた作業の中断の原因になっています。  更に私の本業(日曜大工)が多忙を極めていたことも原因ですが、WPPDには昨年も応募しているだけに新作のカメラで撮影して是非応募したいとアンプの木製ケースが終わった後突貫工事で進めたというわけです。

1)についてはよりスイッチの接点の確実な接触を図るべき!と判っていましたが、そうすることはシャッターのセクターに負担が掛かってきてメカニズムのトラブルを併発しますので、非接触のスイッチで対応しました。  候補としては光電スイッチを最初に検討したのですが、4・6時中発光素子に電流を流さねばならないことと発光素子より漏れた光が悪さをしそうでたぶん駄目だろうと考え、リードスイッチとしました。  直径3mm、長さ10mmのネオジウムマグネットをシャッターセクターに固定し、セクターの回転時にリードスイッチがONとなります。 リードスイッチとマグネットの距離を調整すると、ON時間が長くなる位置がありこの点も好都合でした。  現在のところ完璧とは言えないまでも誤動作率は200回に一度以下におさまっています。 ごくまれに電子的に動作しないことが起こりえますので更なる改善の検討は続けますが、機械的には問題が無い(シャッターの開閉)のでこれが撮影に重大な支障にはならないと腹をくくっています。

2)に関しては、シャッターセクターがスイッチを叩く力が不十分であることが判ったので、マイクロスイッチのアクチュエーターのバネを柔らかくすることにより対処しています。

3)4)は小さくてしっかりした蝶番やロックということで、暇な時にあちこちのお店(約18軒)を周って見つけた候補4点ほどから最終的に選んでいます。

ピンホール板は0.01mm厚ステンレス箔に0.2mmの穴をあけていますが、これは6 x 9判の改良型で経験済みですので、淡々と進んでいます。  また設計時点では考慮していなかった仕切りを本体の中に挿入しました。 そうした理由は電子回路を始め光が乱反射してかぶりの原因になりそうな気がしたためですが、1mm厚のPET板を切り抜いて組み立てつや消し黒を塗った上でネジ止めしています。

塗装は油性ウレタンニスを薄めた物で下地塗装として3回塗った上に3色のスプレー塗料で塗り分けました。 偶々手持ちにあった3色ですが派手な組み合わせの割にシックさも残っているのではないかと思います。 また当然ながら内部は全てつや消し黒のペイントで塗りつぶしています。

ということでやっと完成し試写に入る前の実働試験をしている最中です。 これで撮影するのはWPPD撮影会が最初になりそうです。 ぶっつけ本番になりますが、4 x 5判のフィルムはどこでも販売しているわけではなく入手と現像に時間が掛かるので35mmフィルムほど気楽に且つ迅速には進みません。 従ってテスト撮影の結果は後日お知らせします。

完成した4 x 5判 ピンホールカメラ。 左側に見えるヒモ2本は上がケーブルレリーズで、下がキッチンタイマーに行くケーブルです。  かなり派手な配色で仕上げ楽しい雰囲気を出したつもりです。

縦位置用にセットしたところ。 本体底の三脚取付け穴は縦位置用にセットしたときに三脚に当たらないよう横にオフセットしています。 フィルムホルダー引き蓋は上を向くので操作がしやすいです。

ジッツオの小型三脚とスリックのバル雲台(何れも製造終了)はお気に入りの軽量組み合わせです。 タイマーにはマグネットが付いているので鉄の部分にぺたんと吸い付き固定が容易です。

アクセサリーシューに固定した特製のファインダー。 大きくて見やすいのですがデンデン虫?か潜望鏡?のように見えます。

心臓部のピンホール周りは浅いフードをアルミ板で作り挿入しました。 焦点距離40mm、ピンホール径0.2mmですのでF値は200となります。

カメラ右側面。 ケーブルレリーズ、タイマーのコネクター何れも普段は取り外せます。

随分苦労して探した小型のパチン錠。 これで不用意に裏蓋が開く心配はありません。 その右は点滅LEDで、拡散キャップで白く見えますが実際の光は赤色です。

裏蓋を左側に開けてフィルムホルダーを手前に引く! カメラが上を向いていない限り蓋を開けてもホルダーは落ちません。 またホルダーを外して奥に見える中仕切りを外せば電池交換やシャッター、ピンホール、電子回路の修理・調整が可能です。

裏蓋を開いた状態では構造上発生する光線漏れを抑えるのとボロ隠し?を兼ねた中仕切りがありますが、

それを外せば電池交換と全ての修理・メインテナンスが可能になります。 黄色矢印はセクターに固定したマグネット、赤矢印の下にリードスイッチがあります。



2007/05/18

試写の結果と感想

正直言って私自身4 x 5判の撮影をするのは初めてですので、フィルムをホルダーに装填する方法、取り扱い上の注意などは知識として持っていたものの実際にやって見るのは今回が最初ということで、少々手間取りました。

取り敢えずは富士のベルビア100F 10枚を購入しフィルムホルダーに装填しみなとみらい21で開催された針穴写真写真協会が主催したWPPD(世界ピンホール写真デー)に投稿する撮影会に6 x 9判共々持参し撮影しました。

撮影枚数は10枚分用意したのですがそのうち2枚は撮影後に引き蓋を押し込んだ時にフィルムが飛び出してしまい、1枚は撮影後自宅にてフィルムを取り出す際に間違って明るいところで引き蓋を途中まで引き出し、更に1枚は光線漏れで失敗と合計4枚はオジャンとなるミスを重ねましたので、まともに見られそうなのは6枚しかなかった!という大変粗末な結果になっています。  但しカメラの構造や動作に起因する不具合は全く生じておらず、フィルムホルダーの操作に関連するトラブルだと言うことが判りほっとしています。 (問題のなかった、或いは少なかった5枚を
こちらに掲載してあります。)

因みに最初の2枚のトラブル(撮影後にフィルムが飛び出す)は、フィルムを装填する際にホルダーの下の溝ではなく上の溝(引き蓋用)に入れてしまったのが原因です。 2番目の間違って引き蓋を明るいところで抜いてしまったというのは説明不要ですが、これには最後の光線漏れも付随しており、仮に引き蓋を抜かなかったとしても使い物になっておりません。  光線漏れに関しては縦位置で撮影した2枚で明瞭に発生していますが、横位置で撮影した1枚にもうっすらと出ています。  縦位置撮影の下側に光線漏れによるかぶりがありますが、撮影時にはホルダー引き蓋は上を向いているはずなので引き蓋を抜いた隙間からの光線漏れだと判断しています。  これらの様子は下の写真をご覧下さい。


註) フィルム全体を見るため、スキャンする際正規のフィルムホルダーに装填していないことによるフィルム浮き上がりがありピントが合っておりません。

光線漏れを起こした2枚のフィルム。 どちらも縦位置で撮影したもので、後ろから見ると実際には写真のような位置関係にあったはずです。 ということは、右上から斜めに光が侵入したように見えその方向には太陽がありましたから、強烈な日差しが引き蓋の入る穴から侵入したと予測されます。 左写真の下1/3は私が間違って引き蓋を抜いたため感光した部分です。


この問題に対する対応策としては縦位置で撮影する際の向きを反対にするしかなさそうですが、そうすると三脚取り付け位置を敢えてオフセットしたことが、三脚当たりを増やすのでエレベーターを上げて使うしかありません。 また横位置撮影でも光線漏れを起こす可能性は残っているので、引き蓋を抜いた時にホルダーに被せる帽子みたいな物を用意する必要がありそうです。

ファインダーについては取り敢えず円形視野のまま使いました。  期待通り明るくてよく見えるのですが大雑把なフレーミングには十分なもののやはり撮影範囲を示す枠があったほうがよいので、薄く着色されたフィルムに撮影範囲を切り抜き軟接着してやろうかと考えています。 キッチンタイマー流用の露出時間チェックは数秒の露出では先ず必要ありませんでした。 点滅LEDをあてにしての露出制御で十分と感じましたが、印画紙使用のカメラでは露出時間が長いのでLED点滅を数えるよりキッチンタイマーの方が便利だと思います。

もうひとつランニングコストの高いことを改めて実感として感じました。 1枚辺りの撮影コストは現像代を含めると約\700.-、1日に10枚撮影しただけで\7,000が消えるのはちと厳しいです! 従ってデジカメのようにバシャバシャ撮影して不要なものは削除なんてやりかたとは全く正反対に、じっくりと腰を据えて十分に確認・納得して撮影する必要がありますし、私がやったようにフィルムローディングミスも絶対にやってはならない!!と反省した次第です。

もうひとついささか面食らったのは、私自身はアスペクトレシオが3:235mm判及び6 x 9判)に慣れきっており、4 x 5判の5:4では画面構成しにくかったことです。  でも考えて見ると一般のデジカメ(パソコンモニターと同じ4:3に近いわけですから、4 x 5判撮影前にコンパクトデジカメで試写して画面構成を検討すれば良いかな?などとも考えました。

ともあれ拘りが積み重なって長時間を製作に要した4 x 5判でしたが、カメラ本体には問題点がなかったことと、これで調べたかったこと35mm11mm相当の画角と周辺光量が主)がだいぶ判ってきましたので、これらを踏まえてより上のレベルの4 x 5判の設計を考えると共に、ランニングコスト低減とより大判のフォーマットという全く相反するテーマに対するソリューションを検討しようと考えています。

----- 完 -----
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